オルゴール(北海道) | コワイハナシ47

オルゴール(北海道)

Sさんが情報誌で、高校時代の美術の先生の個展があるのを知った。会場で久しぶりに先生に会って話をして、それが縁で家へ遊びに行くことになった。

立派な二階建ての一軒家。

お茶を飲みながら話もはずんだ頃、

「そうだS、実は妙なものを買ってな」と先生が言う。

「このあいだ北海道旅行に行った時、札幌で古道具屋の前を通りかかったら、どういうわけか急に入りたくなってなあ。それで、店に入ると真っ先にひとつのオルゴールが目に飛び込んできて、見れば見るほど音が聴いてみたくなって買ったんだ。

家に帰って聴いてみると、これがまた綺き麗れいな音なんだ。ところが何回か聴いているうちに、メロディに混じった雑音に気がついた。はて、何だろうともう一度聴いてみたらさっきより少し大きくはっきり聴こえる。その雑音がどうも、男の声のように聞こえるんだ」

先生は立ち上がると、隣の部屋からそのオルゴールを持ってきた。ひとかかえもある立派で大きなものだった。

「ちょっと聴いてみるか」

先生は膝にかかえるようにしてネジをキリキリと回しはじめた。

と、オルゴールから綺麗なメロディが鳴り出した。

「先生、男の声なんて聴こえませんけど?」

「一度目はな」ともう一度、ネジを回した。

別に何も……、いや、聴こえた。オルゴールの音とはまったく別の低い音。

男の呻うめき声。

「何ですか?これ」

「本当だろ?」と、またネジを回す。

綺麗なメロディ……その中に、さっきより大きく鮮明な男の呻き声。

機械から出る音ではない。これは肉声だ。

「もういいですよ、先生」

先生はかまわずネジを巻く。またメロディ、そしてこれまでで一番大きな呻き声。その瞬間、ドスンと天井からものすごく重い音がして、そのまま誰かが走るようなダンダンダンという音が天井を走り回りはじめた。そのたびに家が揺れる。

「先生、止めてください」と思わず叫んだ。

驚いたまま固まっている先生。はっとしてオルゴールを止めた。二階の音もぴたりとやんだ。

「先生、二階に誰かいるんですか?」

先生は蒼白な顔色で天井を見上げている。

「いや、わしはひとり暮らしだ……」

ぽつりと言った。

怖くなったSさんはすぐに帰ろうとしたが、「帰らないでくれ」とずいぶん引き留められた。

「……先生、これ、もう二度と聴かないでください」と言い残して家を出た。

Sさんはその家へは二度と行く気がしないという。

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