並走するモノ二編(東京都) | コワイハナシ47

並走するモノ二編(東京都)

並走 その一(東京都)

あるタクシーの運転手さんから、こんな話を聞いた。

真夜中の道を都心から府中へ向かって空車で走っていたところ、どういうわけか、周りに車がなくなった。後にも先にも車の姿はないし、対向車もない。

(ひょっとして警察がネズミ捕とりでもやっているのかな)と、速度を六十キロに落とした。

その時、多た磨ま霊園横を走っていた。

ふっと気がつくといつの間にか車が並走している。

(妙だ)

多磨霊園の中を真っ黒のタクシーが並んで走っているのだ。

(あれ、あんなところに道なんてあったかな)と思う。

屋根の上に提ちよう灯ちん型のオレンジ色の照明があったのでそれがタクシーに見えたのだ。

よく見ると、運転手がいない。

怖くなってアクセルを踏んだ。スピードが上がる。

だが、霊園を走っているタクシーも、まったく同じスピードで並走している。

(ふり切ろう)とまたアクセルを踏んだが、一〇〇キロを超えてもピタリと並走している。

(どうしよう)と思っているうちに多磨霊園を通り抜けた。その途端に無人タクシーも消えた。

納得できないことがあった。

本当にあのタクシーが霊園の中を並走していたならば、墓石に遮られて車体が見えないはずだ。運転手さんはその時、首をややあげて多磨霊園を走るタクシーを見ていたという。

「空中を走っていたからじゃあ……」と言いかけて、運転手さんはすぐに「すみませんね」とあやまった。

並走 その二(東京都)

あるファミリーレストランで本書の執筆中に、五人の主婦たちの会話が聞こえてきた。

東京都M市の税務署とJR線の高架にはさまれた路上でのことだ。

ある夕方、その主婦のひとりがその道を自転車で走っていた。

目の前を六人の中学生が横並びになって、なにやら声を合わせて歌いながら、ダラダラと自転車を走らせている。邪魔なうえにうるさい。追い越す気もないが、迷惑だなあと思っていたという。

すると、六台の自転車が三台ずつ真ん中から左右に分かれていく。その間には、ちょうど一台分の隙間が出来た。対向車はないし、後ろから行く自分に気づいたとも思えない。

(何かしら?)と見ると、中学生の間に赤い三輪車に乗った小さな女の子の後ろ姿がある。

背中にヒモでななめに背負った人形の、頭や手足がプラプラ動いている。人形が落ちそうで、その主婦はそればかりが気になったという。ところがよく見ると、必死でこいでいる様子もないのに、女の子はちゃんと中学生たちと並んで走っている。

と、すぐに三台ずつの間隔がつまると、女の子の三輪車は押し出されるように消えたという。

しかし、「中学生が六人もいて気がつかないなら気のせいよ」と言う他の女性のひとことで彼女の話は終わり、別の話題に変わってしまった。

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