着流しの男(京都府) | コワイハナシ47

着流しの男(京都府)

京都市内にある某社。

このビルは、〝出る〟という。

こんなことがあった。

何十枚かの資料をコピーして、デスクの上に置いた途端、風もないのに一枚一枚、パパパパパパパパッと天井に向かって舞い上がって、床にパラリ、パラリと落ちて床中がコピー用紙だらけになることがあった。

ある日、スタッフや外注先、取引先の人たちを集めてプレゼンテーションを行った。二時間ほどして、会議が終わった。

Yさんが会議室から出たところ、取引先の何人かに呼び止められて「ところで、ご紹介がなかったので存じませんでしたが、一緒におられた方はどなたですか?」と聞かれた。

「えっ、誰がです?」

「いや、あなたと一緒におられた方ですよ。ホワイトボードの横に立っていた」

「いえ、僕ひとりですよ」

「いいかげんなこと言わないでください。確かにいましたよ」と怒りだす人も出てきた。

会議がはじまった時から、Yさんの隣には着流し姿の男性が立っていたという。笑顔を絶やさない初老の人で、杖つえをついていた。Yさんの説明の要所要所で頭をペコリと下げ、あるいはYさんが「よろしくお願いいたします」と頭を下げると、また同じように頭を下げた。

会議が終わって気がつくと、その初老の着流しの男はいなくなっていたという。

その笑顔、そして態度があまりに紳士然としていたので、その年齢、姿などから会長さんか何かに見えたのだという。

もちろんこの会社にはそんな人などいない。おかしなことに、会社の人間に見た者はいない。お客さんや取引先の人たちに限って見えるらしく、不思議とその姿を二度見る人もいないという。

この着流し姿の男、今も時折その会議室に出るそうだ。

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