人槍 突き刺さる女(東京都) | コワイハナシ47

人槍 突き刺さる女(東京都)

五年前の夏の話である。

東京M市在住のYさんが、明け方近くに自転車で帰宅中のことだ。

この夜は珍しく麻雀で大勝ちして、気分が良かった。それも生まれてはじめて、一晩で役満を四回も上がるツキっぷりだった。

鼻歌を唄うたいながら舗道を走っていると、後ろから車がパッパッパッパーと、短くクラクションを鳴らして近づいてくる。しかも、通りすぎたかと思うと、急にスピードを上げて走りすぎていく。

(何だろう?)

あたりに人影はない。

次に追い越していった車にも、クラクションを鳴らされた。

三台目のワーゲンには同じことをされたうえに、追い越される間中、助手席の窓からは女性が身を乗り出すようにして自分を見ている。

車の通る左側ばかりに気を取られていたので、何気なく右側に目を向けた瞬間、体中の毛穴が開いた。

ショーウインドウに自転車に乗った自分の姿が映っている。

その自分の背中に、宙に浮いた女が槍のように突き刺さっている。女の頭が自分の背中にくい込んでいて、肩から足までが水平に浮いている。

夏だというのに、グレーの冬用のスーツを着ている。タイトスカートから突きだした足は裸足はだしだった。

声も出ないほど驚いて、左側の植木に自転車ごと突っ込んで止まった。

あわてて両手を背中にまわしたがもう女の姿はなく、いつの間にかシャツはもちろんパンツまでが汗でびっしょり濡ぬれていた。

(今のは何だ?)と自転車を起こしながら考えて、ふと目の前の風景がボーッとしていることに気がついた。両目のコンタクトレンズがなくなっていたのである。

「汗と一緒に飛び出したのでしょうか?」とYさんは語った。

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