高僧Tさんの話(大阪府、和歌山県) | コワイハナシ47

高僧Tさんの話(大阪府、和歌山県)

翡翠色(和歌山県)

Tさんと親しい人たち数名が高野山へ登った。

途中、弁天堂がある。ここへお詣まいりしようということになっていた。

高野山系の寺院が密集する場所の入口に、女人堂という御堂がある。そこから右に行く山道をとって、四、五十分ほど登った。

まだか、まだか、と息を切らせて登っていくと、頂上の方から太鼓の音が聞こえ出した。見あげると、頂上のあたりに翡ひ翠すい色の大宮殿のようなものが見える。

「さすが高野山、すごいものがあるなあ」とみんなで驚いた。

「さあ、みなさん、きっとあれが目指す弁天堂です。もうすぐですよ」とTさんがみんなを促して先頭を切った。

登りながら、次第に木々の間から見える頂上の大宮殿が大きく、近く見えてきた。

ようやく山頂に着いた。

だが翡翠色に輝く宮殿などどこにもなく、小さな弁天堂がそこにあるだけだった。

阿修羅像(大阪府)

そのTさんに、三人目の子供が出来た時のこと。

大阪で不動産会社の社長をしているTさんは、僧侶としての修行もしており、仏門の師匠がいる。ふたりの子供が産まれた時はそのお寺に挨あい拶さつに行き、師匠である住職に名付け親になってもらっていた。しかし、三人目が産まれた時は仕事で多忙だったため報告が遅れてしまい、結局三人目だけが師匠に名前を付けてもらうことができなかったので、ずっと気に病んでいた。

ある夜、夢枕に阿修羅像が立った。顔が三つ、腕が六本という像だ。

「子供が出来たんならいっぺん顔を見せに来んか」

ハッと目が覚めた。

(えらいものが夢枕に立った)

これは師匠に会わねばと意を決し、次の休みの日に奥さんと子供たちを連れてお寺へ行った。

「ああ、よお来なさったのう」と住職に喜んで迎えられた。

本堂に入って、住職の話を聞いていると「そうじゃ、お前さんにはまだ見せたことがなかったが、今日は特別に見せてやろう」と言う。

住職は本堂の奥にTさんたちを案内し、左手の扉を開け、奥の御堂の中にTさんたちを招き入れた。

「あっ!」と声を上げた。

三面顔に六本の手。

それは夢枕に立ったのとまったく同じ阿修羅像だったという。

修行の褒美(大阪府)

高僧T師の修行時代のことである。

大阪のあるお寺に籠もって、毎日深夜まで修行していた。

灯明の中で一心にお経を読み、精神を鍛える。

修行が終わると、毎晩のように師匠から電話があった。師匠は比ひ叡えい山ざんにおられるが、そこから修行の様子を見ているのだという。そして、もっとここはこうしろとか、こういうやりかたをしなさいなどと、電話で指導をうける。怠けたりすると、ちゃんとお叱りの言葉がある。

ある夜、修行が終わって部屋へ戻るといつものように比叡山の師匠から電話があった。

「今夜のあんたの修行は実に心がこもっておった。だから仏様がおみえになって、おほめと励ましのために、蠟燭に紫雲と観音様を作ってござるが、あんたは気がついたか」

「いえ、気づきませんでした」

「見にいってみなされ」

「わかりました」

と、本堂へ行ってみた。

蠟燭の先を見る。蠟があふれて紫雲のようなものが出来ている。その先っぽには蠟で出来た小さな小さな観音様が座っていた。

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