電車(東京都府中市) | コワイハナシ47

電車(東京都府中市)

多磨霊園が窓から見下ろせるマンションに住んでいるという女性から聞いた話。

友だちが三人泊まりに来ることになった。

ところがひとりは残業で終電に乗り遅れたのでタクシーで行く、という連絡が入った。

先に来ていた友だちと、「電車がないからタクシーで来るって」などと言っていると、窓の外から、プア~ンという電車の警笛が聞こえた。

ガタンガターン、ガタンガターン

と、電車の走る音もする。

「エッ、こんなとこ電車が走ってんだ」と友だちが窓際に見に行く。

「そうねえ、こんな時間にねえ」と彼女は返事したものの(あれ?)と思った。

この近くに電車は通っていない。また、こんな音は今まで聞いたこともない。

時間も遅い。

(そんなはずは……?)

すると友だちは、ベランダから外を見ながら「あっ、電車、走ってる走ってる」と言う。

「ほんと?」と彼女も窓の外を見る。

昼間ならそこは多磨霊園が見えるはずだが、夜中なので真っ暗な空間。ところがその闇の中を、一両編成の路面電車が明かりをつけて走っているのだ。

「あら、ほんと……」と口から出たものの、(変ねえ、実はあそこ……)と言おうとした時、部屋の電話が鳴った。A子さんだった。

電話の向こうで「ごめんごめん、近くまで来たから」と詫びている。と、その時、霊園を走っている電車が警笛を鳴らした。

プア~ン

すると「あっ、電車、まだ走ってるのね、じゃ、すぐ行くから」

プツ、と電話が切れた。

そして窓際まで戻って、また外を見る。電車の明かりがない。

「ねえ、電車、どこ行ったの?」

すると友だちは「あっちへ行って、見えなくなったよ」と指さす。

そこは道路の明かりがある。そこで消えたらしい。

しばらくして、A子さんが到着した。

さっきの電車の話をした。

「あそこは霊園でしょ。私、あんたんとこ何度も来て、知ってるわよ。あんなとこ電車なんて通ってないし、路面電車なんて」とA子さん。

「でもA子、電話で聞いたでしょ。電車の警笛。あっ、電車、まだ走ってるのねって言ってたじゃない」

「あら……、そういえば。そうそう、確かに聞こえたわよ。でも近くからかけたのに、電話ごしにしか聞こえなかったわね。切ったら音も消えたし」

そんなことがあったのは、その時ただの一回だけだった。

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