百物語の怪(大阪府河内長野市) | コワイハナシ47

百物語の怪(大阪府河内長野市)

百物語の怪その一(大阪府河内長野市)

一九九九年の夏。大阪府河内長野市の某ホールで、私(中山)がタレントの北野誠さんをゲストに迎えて百物語のライヴを行った時のことである。

終了と同時にお客さんは帰りはじめたが、会場のロビーで女性のお客さんから声を掛けられた。

「中山さん、気づかれました?」

(?)

「後ろに衝立がありましたよね。その衝立の上に女性の首が載ってましたよ」

「いつです?」

「ライヴがはじまって間もなくでした。でも途中でフッと消えちゃいましたけど。気をつけてくださいね」

ところが、その後も同じことを言うお客さんが何人も現れた。それらを総合すると、上手客席から向かって(右側)の衝立の上に人の首が載っていた。ショートヘア、二十代後半の女性の横顔。ただし暗かったせいか顔の印象はない。ライヴ開始から十分ほどして現れ、しばらくして消えるが、その間じっと出演者を見下ろしていたという……。

百物語の怪その二

その怪談ライヴが終わった帰りの道のことである。

私の所属している事務所のO社長、イベントプロデューサーのKさんと私の三人が、駅へと向かって歩いていた。

その時、Kさんがこんな話をしだした。

O社長とKさんは、本番中、他の関係者と共にステージの下手の袖そでから我々の怪談ライヴの様子を見ていた。その右手には音声機材があって音声さんがいる。

その音声さんが、本番中、バンとヘッドホンを床に叩たたきつけると「ちょっと煙草吸ってきます」と言って、通路に出た。

関係者は突然の音声さんの行為にあっけにとられた。

(何があったんや?)

O社長がヘッドホンを拾い上げて、耳に当ててみた。

「何や、妙なもんが聞こえる。女のすすり泣きやろか……」

「社長、気持ち悪いこと言いなはんな」とKさん。ヘッドホンをO社長から取り上げて耳に当てる。

「……わわっ、これ、女の笑い声ですやん」

Kさんも思わずヘッドホンを床に落としかけた。

今度は北野誠さんのマネージャーが……。

確かに聞こえた。

「何で女の声がすんのや。混線してんのか?」

と言うO社長の声で、音声さんが戻って来た。

「混線とちがうんです」と言って、ヘッドホンのスイッチを指差した。

〝OFF〟になっている。

音声さんによるとラインは中山、誠さん、司会者、そしてゲスト用のピンマイクの四回線。BGMと効果音を兼ねたラインが一回線。つまり五回線がこの機材に来ている。

さて、本番中、女の奇妙な声がヘッドホンから聞こえてきた。

混線だと思ったのでひとつひとつのラインを切っては戻し、切っては戻しながら確かめてみたが、切れることなくヘッドホンからは女性の声が聞こえる。

まさか全部のラインに入っているのかと思うと気持ち悪くなって、ヘッドホンのスイッチをOFFにした。

全部の音が消えると、女の声だけが残った。

「わっ!」と驚いて思わずヘッドホンを床に落としてしまったのである。

女の声は、結局怪談ライヴが行われている二時間、途切れることなく続いた。

なるほどと思い、衝立の首の話をした途端、ふたりは鳥肌を立てた。

百物語の怪その三

河内長野市のホールで開催した怪談ライヴ。

この時、北野誠さん以外にMさんという知り合いのタレントさんに出てもらっていた。

そのMさんから後日聞いた話。

Mさんの出番は後の方だったので、ひとり楽屋で煙草を吸っていた。すると、煙草の煙が風もないのに真横の壁に向かって真っ直ぐ糸のように長く流れていく。何だか気持ち悪くなって、ちょっと早いが、舞台袖へと向かった。袖に行くと何人かの関係者やスタッフがいる。一緒にそこから本番中のステージを見た。

すると、上手(客席から見て右側)の衝立の後ろにジーンズ姿の女性が立っている。顔は分からないが二十代半ばくらいのショートカットの髪。スタッフだと思ったらしい。しかしそこは客席からは衝立の陰だ。顔を出さない限り、舞台も客も見えない。あんなところに立って何をしているのだろうと思ったという。

舞台の照明は蠟ろう燭そくの灯ひと薄く青白いスポットライト。それが衝立に遮られ、背後は真っ暗。なのにその女性がはっきり見える。しかもさっきから微動だにせず、目の前の真っ黒い衝立を見つめている。

出番が終わって袖に戻っても、やっぱりその女性は衝立の後ろに立っていたが、不思議なことにライヴの終了間際にはもう姿を消していたという。

百物語の怪その四(東京都)

怪談ライヴの三日後、東京新宿の某所で定例となった『新耳袋』トークショーを催した。

ステージも客席も照明を落として、蠟燭の明かりを頼りに怪談を披露していく。日付が変わったところで休憩をとった。

客席が落ち着かない。

何があったのか聞くと、どうもステージ後方の闇の中に女が立っていたという。あるいはステージの上手にあるモニターの上に、女の首が載っているという者もいる。

「どこ?」と聞くと、何人かのお客さんが、ステージの上手を指さす。

二十代半ばから後半のショートヘアの女性。顔の印象はなぜかない。お客さんの証言が三日前のホールに出た女性と似ているのが気になる。

ところで、トークの前半のことである。ステージの脇にモニターがあって、スタッフのIさんは、そこに奇妙なものが映っているのを見た。

木原の肩に、女の細く白い手が載っている。

ビデオカメラがそれをはっきり捉とらえている。

(あれ?)と思って、Iさんは客席の方へ行って実際のステージを見るが、そこからは何も見えない。しかし客席用のモニターにも、やはり女の手が見える。

場内の誰も騒がないので、(これが見えるのは私だけかな?)と思った。

元の場所に戻って「木原さんに、何か見えない?」と同僚に問いかけると「見えますよ。肩の上でしょ」と言った。

百物語の怪その五

『新耳袋』トークショーの女性スタッフのひとり、Iさんが「明日、友だちの結婚式がありますので、お先に失礼します」と言って、ひとりタクシーで帰っていった。

このタクシーでIさんは、奇妙な体験と出会った。

乗車した途端、(何だか空気が重い)と感じた。

心細くなってタクシーの運転手にいろいろ話しかけてみたが、その運転手は全く何も応えてくれない。

(無愛想な運転手)と思っていると、その運転手が、ちらちら、ちらちらとバックミラーばかりに目をやっているのに気がついた。

と、運転手はバックミラーをぱっと手で隠した。

(バックミラーがどうしたのかしら)

「お客さん、絶対に後ろ、見ないでください」と言う。

「えっ!」

すると運転手は手で隠したままバックミラーをぐるっと回して裏を向けてしまった。

「あの……」

瞬間、それを制するように、

「何も聞かないでください」と言ってひと呼吸おいた。

「見たら、目、つぶれますよ」

そう言われて、身体が縮んだという。

シェアする

フォローする