妙見山にて(兵庫県) | コワイハナシ47

妙見山にて(兵庫県)

ここでいう妙見山とは大阪府と兵庫県の境にある霊山のこと。

〝妙霊不可思議を見る山〟という意味なのだそうだ。

夏の夜、タレントのSさんが妙見山の道をお弟子さんが運転する車で走っていた。この先にSさんの自宅がある。

Sさんは後部座席でうとうと眠りかけて、何気なくふっと前を見た。

あたりは人家もなく、真の闇。

ただ、真っ直ぐ伸びる車のヘッドライトが照らすアスファルトだけが前にある。と、その時、ヘッドライトの中を、ひとりの子供が歩いてくる。

「ああ、今日は祭りかいな」と、何となくSさんはつぶやいた。

その子は浴衣姿で、ものすごく大きなお面を被っていたからだ。

「今何時や?」とSさんは身体を起こしながら聞く。

「二時になるところです」とお弟子さん。

(夜中の二時?国道を歩くお祭り帰りの子供?このあたりに家なんかないで)

車がその子に近づく。

「ちょっとスピード落とし」

(あれはお面やない、ハリボテの頭や)

はっきり見えたその子を見て、Sさんは瞬時にそう思った。

身体の半分はあろうかという大きな頭。大きな目。その頭を重そうにゆらゆらと身体を左右にゆすって歩いている。

車がその子に近寄った。

あ!

わっ!

声にならない驚きがあった。

すれ違いざま、その顔がニコリ、と笑ったのだ。

目尻にくちゃっと皴ができた何とも奇妙な笑顔だったという。

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