紫のバス 某病院にて(千葉県) | コワイハナシ47

紫のバス 某病院にて(千葉県)

Kさんは子供の頃から霊が見えていた。生まれつき見えていたので、最初は誰にでも見えるものだと思い込んでいた。

友達の家に遊びに行った時、おばあちゃんがいた。「こんにちは」と挨拶したのだが、友達が妙な顔をする。

「誰に挨拶したの?」

訝しむ友人におばあちゃんの話をしたところ、友人は驚いたような顔をしてこう答えた。

「おばあちゃんは、死んじゃったよ」

そのうち「お化けが見える」と証言すると、興味本位で友人に「見てくれ」と言われるため「見える!」とは言わなくなった。

彼女は十年ほど前から千葉県の房総にある某病院で働いている。人が生き死にする場所だけあって不可解な事はたまにある。

「あの部屋、幽霊が出るんだよね」

そう言って関係者が休む部屋にお札を五枚も貼っていた医者がいた。しかし、Kさんが見るかぎり部屋に幽霊がついているのではなく、その医者に幽霊がついていたのだ。

「お札を貼っても無駄なのに……」

彼女はそう思った。

また、こんなこともあった。ある時、あまり見たことがないおじいさんが病院の廊下で呆然としていた。そのおじいさんはKさんの方を見ながら、こんなふうに訊ねてきた。

「ここはいったいどこなんですか?」

昼間に緊急搬送されてきたおじいさんだった。自分が亡くなった事に気がついてないのだ。

人間が亡くなるときには、様々な現象が起こる。苦しんで亡くなった人の場合、足から魂が抜けるらしく、安らかに亡くなった人の場合は頭から(すっーと)抜けるという。また、人知を超えた存在がお迎えに来る場合もある。Kさんは美しい天女が迎えに来る臨終を見たことがある。

「そんなことが本当にあるんだ!」

彼女はそう思って言葉に詰まってしまった。二人の美しい天女が、きらびやかな衣装を身にまとい、荘厳な音楽に乗って死者を迎えに来たのだ。しかも、孔雀のような見たことも無いオレンジ色の鳥も一緒に迎えに来ていたという。その亡くなった方は、生前信仰心が強い人物であったそうだ。信仰心を持つことは、やはり大切なのかもしれない。

またこんなことがあった。

「紫のバスが迎えに来たのよ」

ある病室に入院していたおばあちゃんがそんな話を、Kさんにしてきた。

「紫のバスって、なんですか?」

その女性が話すところによると、夢の中に紫色のバスがやってきて「この車に乗るように」と促された。しかし、いまいち納得がいかないおばあちゃんは、目が覚めた後、夢の中に出てきた紫のバスに乗る権利を、隣のベッドで寝ていた人物に譲った。すると隣のベッドの人物が突然亡くなってしまった。

「私はあのバスに乗らないわ」

そのおばあちゃんはそう言って豪快に笑った。彼女がちょうど紫のバスを見た頃、違う病院に入院していた夫が亡くなっていた。

(ひょっとしたら一緒にあの世に行きたくて、ご主人が奥さんを迎えに来たのかな?)

そのおばあちゃんは今も病院で生きている。女は逞しい。

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