首吊りおばさん(千葉県船橋市) | コワイハナシ47

首吊りおばさん(千葉県船橋市)

Kさんは、船橋在住の十代の女性である。性格は天真爛漫で人を疑うようなことはしない。それが彼女の欠点でもあり良いところでもある。子供の頃からその素直な性格は変わらず、まっすぐ成長してきたタイプの女性だ。

彼女は幼い頃から、半透明の人が見えていた。物心ついた時から、人間には体を持っている人と、体を持たず消えたり現れたりする半透明の人の二種類がいると思い込んでいた。その体を持たない人が普通の人には見えないということに気がついたのは、小学校に入ってからだ。

「あそこに人がいるよ」

そう言っても友達は首をひねるばかりで、見ることができない。

(自分にだけ見えている人間がいる)

そう気づいてからは、あまり他人に半透明の人のことに関しては語らなくなった。とにかく見えない人は、やたらに半透明の人のことを怖がるからだ。

子供の頃、やたらと見かける半透明の人がいた。

「こんにちは、また遊びに来たよ」

両親が留守になると、リビングの横にある大きな窓から、四十代ぐらいの女性が体をクネクネとさせながら滑り込んでさた。

「おばさん、だーれ?」

そのおばさんは、口元だけでニヤニヤと笑いながら低い声でこういった。

「湿気のある場所からやってきたんだよ」

そういうと勝手にリビングでくつろぎはじめた。家の中の仕組みをあらかじめ知っているかのように、おばさんはKさんの自宅を我が家のように使った。

「おばさん、なんで家に来るの? お父さんお母さんの友達?」

留守番を頼まれていたKさんは、いろいろな質問をその女性にぶつけたが、

「湿気のある場所から来たんだよ」

と、同じような返事しかしない。気味が悪かったが、おばさんは夕方になると入ってきた窓から、体をクネクネと揺らして出て行った。それからと言うもの、Kさんが留守番しているときに限って、おばさんはくねくねと体を揺らしてやってきた。

ある日おばさんは、部屋にあったロープを指差してこういった。

「このロープで首をくくって高いところからぶら下がると、お父さんお母さんが喜ぶよ。ひゃひゃひゃひゃ」

おばさんはそう言って低い声で笑った。まだ幼かった彼女はロープで首をくくる意味がわからなかった。だが不吉な予感がして、その日は断った。

帰ってきた両親に、この「湿気のある場所から来たおばさん」について話した。その話を聞いて両親は愕然とした。

「今度そのおばさんが来ても、言うことを聞いてはいけないよ」

母親はKさんにきつく言い聞かせた。その次の日、また彼女が一人で留守番をしていると窓からおばさんが身をよじらせて、くねくねとしながら室内に侵入してきた。

「首をくくる決心はついたかい? 首を吊ると気持ちがいいよ」

おばさんは表情ひとつ変えず低い声で再びささやいた。

「おばさん、自分で首をくくったら?」

Kさんがこういうと、おばさんは怯えたような表情になり、体をブルブル震わせると低いため息をつきながら消えていった。以来、首吊りおばさんの姿は見ていないという。

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