内線電話(千葉県) | コワイハナシ47

内線電話(千葉県)

筆者が日本通運株式会社で働いていた時の同期にOくんと言う男がいる。ある年、Oくんは船橋支店管内の八千代営業支店に配属された。

「あんまり人がいないから大変だよ」

Oくんはそんなふうにぼやいていた。月末になるとその月の売り上げや支出を計算して月末〆という作業を行うのだが、現在のように社内にパソコンも導入されておらずメールもない時代である。月末〆の作業は過酷を極めた。Oくんが夜遅くまで月末〆の作業をしていると、必ず電話が鳴ったという。リンリンリーン。電話機を確認してみると、外線ではなく明らかに内線であった。

(あれ、おかしいなぁ。事務所は自分一人しか残ってないはずなのに、作業員が誰か残っているのかな?)

恐る恐る電話をとってみると、相手は何もしゃべらない。ツーツーツー。既に電話は切れていて、電話機はツーツーと音だけ発している。

(なんだこれ、変だな)

そんなふうに思っていると、十分ほどしてまたしても電話が鳴る。リンリンリーン。今度こそ誰かが居残りしていて電話をしてきたのかと思って受話器を取ると、またしても声が聞こえない。ツーツーと音だけが聞こえてくる。

(なんだよ。月末作業で忙しいのに)

Oくんがそんなふうに思っていると、また電話が鳴った。リンリンリーン。

彼はさすがに頭にきたらしく、事務所の二階にある作業員の更衣室に入っていった。この時間に人が隠れている可能性がある場所はここしかない。「この忙しい時に、いい加減にしてください! 誰か隠れて、いたずらをやってるんでしょう!」誰もいない更衣室で大声を上げるOくん。

……。

静まり返る更衣室。すべてのロッカーのドアを開けて中を確認した。しかし、誰も隠れてはいなかった。ふと更衣室の真ん中に置いてあるテーブルを見ると、電話機の受話器が外れていた。

(誰もいないのに、誰が受話器を外して内線ボタンを押したのか?)

Oくんは得体の知れない不安を感じた。数日後、彼は先輩から二階の更衣室で首をくくって自殺した先輩の話を聞いた。当時の関東の各支店を統括していた役員の息子さんが八千代営業所に勤務していたのだが、過酷な長時間労働と厳しい人間関係に悩み、自ら命を断った場所だったのだ。「あんまり残業しないで、早く家に帰れって先輩が心配して電話をかけてきてくれたのかもしれないね」Oくんは筆者に向かってそうつぶやいた。サービス残業が当たり前だった時代の話である。

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