こっちへおいで海から伸びる手(山形県鶴岡市 白山島) | コワイハナシ47

こっちへおいで海から伸びる手(山形県鶴岡市 白山島)

山形県鶴岡市の海岸にある白山島。

ちょうど神奈川県の湘南の江の島のよう、同じように浜から島へと赤い橋が架かっている。その橋の下には無念の霊が眠っているとも言われる。

小さな無人島には、おびき寄せられるような魔力がある。

ギャンブルにはまり、借金だらけになった高田貴男。

毎日借金取りに脅されて、ついに夜逃げした。付き合っていた女を保証人にして、借金を背負わせて逃げた。とにかく見つかれば殺される。マフィアに売られてしまうかどちらかだ。

高田は庄内市の出身だった。もう東京なんてまっぴらだ。悪いのは俺じゃない。都会が悪いんだ。俺にそんな生き方をさせた東京がな。

「おじさん、どっから来たの?」

ぎょっとして高田が振り向く。新手の借金取りか?

そこには水着に薄手の服を身に着けたギャルが3人立っていた。

結構可愛いじゃないか。わざと都会男を気取る。

「東京だよ。君たち、こっちの高校生? どこの学校?」

「どこだっていいでしょ」

話してみると悪い子達じゃなかった。

夜にまた会おうとなって、その場は別れた。

そのまま夜を待っていると、さっきのうちの一人がやってきた。この子が一番美人だと思っていたから、ちょっとラッキーだ。

「おじさん、私とだけ遊ばない? 二人きりで橋わたって向こうの島いかね?」

「……いいのか? 他の二人はどうすんだ」

「いいんだって。あいつら別に友達じゃないし、私だけでいいでしょ?」

「あ、ああもちろん。最初から君だけがかわいいと思ってた」

細く長い赤い橋はライトアップされて幻想的だ。

手を引かれるように、小娘がおいでおいでして橋の入口で待っている。

小娘は昼間の水着のまま。胸元が大きく盛り上がっていやらしい。

夜なのにまだ水着ってことは、わざと俺を誘ってるに違いない。

実にけしからん! と高田はニヤつきながらついていく。

不思議とムラムラした気持ちが歩けば歩くほど高まる。

最後はどこで襲おうか、あの島なら広そうだし、なんてモヤモヤ考える。

「おじさん、絶対振り返ったり、足元みちゃダメだよ」

「あ、ああわかった。君だけを見てるよ」

後ろから足音が聞こえた。軽やかな、女性の足音だ。2人はいる。一人が俺の背後で鈴を落とした。

「チリンチリーン」

拾おうとしたが、あ、下を見ちゃいけない。約束だった。拾わず通り過ぎた。

すると、いきなり背後から声をかけてきた。

「おじさん、あの子とだけ遊ぶつもり? 私達とも遊ぶよね?」

やっぱりさっきの二人だ。俺を取られると思って焦ってついてきたな。俺もこの辺りじゃモテるんだな、と高田は浅はかな妄想をめぐらす。

そうだ、振り向くのがだめなら、後ろの二人を先に行かせればいい。

「君たち、おじさんの前を歩きなさい」

「何で?」

「おじさんはね、みんなと遊びたいんだが、あの子がどうしてもおじさんを独占したいって言うからね。振り向くのはダメだって言うんだよ」

「ふーん。振り向くなって言われたの?」

「そう。しかも下も見ちゃいけないって言うんだよ」

聞き分けがいい二人は、高田を追い越して歩いた。うわー見事な後ろ姿。若い子はいいねえ、お尻がきゅっと上がってて。高田は4人で遊ぶ方法を考えていた。後ろから抱き付くだろ? そのあとは手を腰に回して……それにしても細い腰してるなあ〜また更にムラムラしながら後ろを歩く。

あっと高田は小さく声をあげる。

先を歩く3人の横から白い手が出ている。橋の下からだ。ま、まさか自分にも? と思って思わず下を見た。何本も何本も手摺の下から手が出て、足を取ろうとしている。

ぐにゃっとした感触。誰かの手を踏んだか? いやいやもう見ちゃいけない。

霊なんか信じてないが、じゃあこれは何だ?

「おじさん、山入るよ」

「あ、ああ分かった。急ぐよ」

3人が手を振っておいでおいでしている。怖さより3人の女の色香につられて山に入った。階段を登っていく。

「おじさん約束守れた?」

「もちろんだよ、振り向かない、下を見ない、だろ。なーんも見てないよ」

「そう、それならよかった。じゃあご褒美ね」

そこからは3人娘が高田の前、横、後ろに密着し、階段を押し上げるように歩いた。夢のような時間。娘たちは高田の体を舐めるように触りつづける。

いつしか頂上の崖の上に立っていた。

目の前に立った娘たちが、薄い服を脱ぎ、高田のまわりを踊り始める。

水着も少しずつ剥がれていき、ほとんど裸体になった。高田が息を飲む。

「さ、おじさんこっちに来て…ね、飛んできて…」

「う、うん、今いく…」

裸の3人娘に飛びつこうと、高田はジャンプした!

はっと気づき下を見ると、海。

「うわあああああ」

山の頂上から真っ逆さまに海に落ちた。

「下見ないでって言ったのにね」

「またダメ男、落とせたね」

「ひとつ、約束破るからよ」

最初に高田を呼び寄せた娘が言った。

「私とだけ遊ぼうって約束。破るからよ」

「約束破る男って何やってもダメよ」

そして3人はすうっと消えた。

高田は瀕死の状態で見つけられた。

岩に当たり、腰骨がくだけてしまった。立つことができない。

気が遠くなる中で、水面を見渡すと、ぐしゃぐしゃの顔になった人間が何人も浮いていた。生きてない。霊だ。

そしてまた、崖からジャンプする人間がいた。いや、霊か?

皆、霊たちは橋に向かって進み、手を伸ばす。

誘われて行くな、気を付けろ、と。

その日救急車で運ばれながら、高田の魂は海に向かった。

あの3人娘め。今度こそ。高田の心臓の音が止った。

この島は古代の昔話にもある神秘的な神話がある。

1400年の頃、蜂子皇子が都を終れ、流浪のままに北上を続けていたところ、この島にたどり着いた。

麗しき乙女たちが笛の音に舞いながら皇子を迎えたと伝えられている。

皇子は三本足の烏によって導かれて羽黒山に赴いたという。

皇子が隠れた洞窟は井戸に繋がっていた。

(案内板より抜粋)

歴史は昔起きたことじゃない。

今も続く事でもある。

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