ターミナルの幽霊(千葉県) | コワイハナシ47

ターミナルの幽霊(千葉県)

Mさんは、大学卒業後に就職した運送会社に長く勤めている。当初は四国支店に勤務していたが、数年経って地元の千葉県に戻ってくることができた。運送会社の労働は激務を極めた。若手社員の頃は、集荷されてきた荷物を各地方へ振り分けるターミナルの仕事を担当していた。その時期に何度か奇妙な体験をしているそうだ。現在では機械によって、荷物に書かれている仕分け番号ごとに自動的に仕分けられるのだが、Mさんがターミナルに勤務していた頃は、手動で荷物を各方面に分別していた。流れてくる荷物を見ながら、その荷物に書かれている仕分け番号を見て適切なカートに振り分ける。これが何時間も続くわけだ。精神的な疲労が極限まで達する厳しい仕事であった。いつものように流れてくる荷物をにらみながら、モニター越しに荷物を分類していると、誰かがやってきた。Mさんの視界の隅に人間の足が見えている。

(なんだろう。早く話しかければいいのに)

そう思っているが、なかなかその人物は話しかけてこない。しかも、何故か裸足だ。

(えっ? 裸足……靴を履いていない……)

思わずぞっとして、その人物のほうに視線を向けた。

「えっ?」

───そこには誰もいなかった

不思議に思って他の従業員に話してみると、何人かが同じように裸足の人物に出会ったと語った。

(この人物は、いったい何が言いたかったのだろうか?)

結局、その裸足の人物が何者かわからないまま、ターミナルの勤務を終えた。Mさんはその後、茜浜にある倉庫の勤務に回された。その倉庫には常日頃から不気味なムードが漂っており、何者かが息を潜めてこちらの様子をうかがっているような気配がしていた。

(やだなあ。あまりここに一人で残りたくないんだが……)

その日は遅番で一人遅くまで倉庫に残っていた。

「屋上につながるドアが開けっ放しです。帰るとき閉めといてください」

早番だった社員はそう言い残して先に退社した。時間はすでに二十二時、作業員や運転手たちも帰り、だだっ広い倉庫に一人ぼっちのMさん。

(あぁ、やだなあ。屋上までドアを閉めに行かないと……)

憂鬱な気分になりながらも、鉄製の階段を上って屋上まで行くと、屋上につながる鉄のドアを閉めようとした。すると、突如ものすごい音が聞こえた。

たんたんたんたんたんたん!

何者かが鉄製の階段をものすごい勢いで駆け上がってくる。

「なっ、なんだ!?」

泥棒なのか? それとも幽霊なのか? 恐怖に駆られたMさんは思わず屋上に逃げ出してしまった。

「ハア、ハア、ハア、ハア……」

息がはずみ呼吸を整えることができない。激しい心臓の鼓動を感じた。しかし、いつまでも屋上にいるわけにはいかない。

(このままでは、霊になめられちゃうよな)

意を決したMさんは、呼吸を整え気持ちを引き締めると、「わーわーわー!!」と大声で叫びながら階段を駆け下りた。

───しかし、階段の下には誰もいなかった。

結局、倉庫に出た幽霊らしき者の正体もわからないままであった。

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