マジシャン(千葉県八千代市) | コワイハナシ47

マジシャン(千葉県八千代市)

Nさんは八千代市で「まぼろし堂」という駄菓子屋を営んでいる。敷地が大きい店で、八千代市中からお客さんが集まってくる。プロレスや演奏会など様々のイベントをやっている、なかなか攻めている駄菓子屋だ。そんなNさんのもとに数年前、不思議な男がやってきた。共通の友人が紹介してくれた「てっちゃん」という男で、当時はまだ二十代だったという。

「俺はプロのマジシャンなんです」

猫ひろしのような佇まいのその男はそう宣言した。だが、プロといってもほとんど仕事がもらえず、自分でプロのマジシャンと名乗っているだけだった。

「俺はどんどん仕事がしたいので、Nさん、ぜひ仕事を紹介してください」

「あぁ、わかったよ」

こうしてNさんとてっちゃんの付き合いが始まった。当初、Nさんは彼を怪しい男だと思っていた。とにかく動きが怪しいのだ。しかも、言葉の滑舌が悪く、言っていることがよくわからない。

(こいつ変な奴だな)

その疑問は、彼の告白によって明確に証明された。

「俺、実は自閉症だったんです。いじめられていたんですけど、学校で手品をやったら人気者になれたんです。だから、子供たちの笑顔が見たくてマジシャンになったんです」

「そうか、わかったよ」

それ以来、Nさんは彼とより一層仲良くなった。そんな彼がある日、自分の霊視能力についてカミングアウトした。

「Nさん、俺は霊が見えるんです。子供の頃からずっと」

「……霊が見える?」

Nさんは正直言うと、彼のいうことをあまり信じていなかった。よく話題の中心になりたい人が「霊が見える」と嘘ぶくことがある。彼もその類だと思ったのだ。冷やかし気分でこんなことを聞いてみた。

「うちの敷地の中のどこに幽霊がいるの?」

すると、彼は無表情で敷地内の塀に向かって指を指した。

「あそこに子供の霊が立っていますよ」

その瞬間、Nさんはゾッとした。一見、何も見えないが、塀の向こうには墓地が広がっていたからだ。

(こいつ、本物かもしれない!)

彼はあちこちで幽霊が見えるらしく、そのため幽霊に対しては全く恐怖を感じず、むしろ人間の方が怖いと思っているらしい。

「俺の夢は座敷わらしにマジックを見せて笑ってもらうことです」

彼は日ごろからそう言っている。ある時、Nさんは奇妙なことに気がついた。彼が店に来ると平日だろうと休日だろうと、なぜかお客が殺到する。

(なぜだろう? あいつが来ると、いつもお客がどこからともなく集まってくる)

試しにあまり集客が期待できない地元のイベントに、彼を参加させてみたところ、やはりどこからともなく客が集まってきて、そのイベントが大入りになった。最近、Nさんはこう思っている。

(本当はてっちゃんが、座敷わらしなんじゃないだろうか?)

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