野田焼き地獄(群馬県) | コワイハナシ47

野田焼き地獄(群馬県)

Iさんの家は、ごく普通の平坦な住宅地にある。この住宅地の中には一区画だけ空き地が残り、地蔵が祀られているのだ。Iさんは現在三十代の女性だが、幼少の頃には空き地があるだけで地蔵はなかったという。

彼女が小学五年生の頃、地主が代替わりして、そこに家を建てることになった。ところが、工事が始まると、Iさんや同じ住宅地に住む同級生、あるいはその兄弟などが同じ夢ばかりを見るようになった。その夢というのは──。

山の中で盛大に焚き火が行われている。

「助けてくれえっ!火を消してくれええっ!」

着物を着て股引を穿いた中年の男性が、荒縄で木の根元に縛りつけられ、死に物狂いの形相で叫んでいる。彼の周りには大量の落ち葉や草、伐り出された木の枝や灌木などが積み上げられていた。男性は縄を外そうと必死に身体を揺らすのだが、幾重にも巻かれた荒縄は肌身に食い込むばかりで緩みもしない。そこへ白煙と橙色の猛火が迫ってくる──。

「おのれ、よくも……。呪ってやる!永久に呪ってやるぞう!」

そんな夢を毎晩続けて何人もの子供が見るのである。ひどく魘され、体調を崩す子供までいた。それを知った大人たちも、これは放っておけない、と心配するようになった。近所同士で相談した結果、神社の神主を呼んで御祓いをしてもらうことになったという。

やってきた年配の神主は、例の空き地に建築資材などが運び込まれ、家が建てられようとしているのを見て、すぐさま「あれが原因でしょう」と指摘した。

神主の記憶によれば、かつて先代の地主もこの土地に家を建てようとしたことがあった。だが、周辺の家々から病人が出たり、火災が起きたりした上、しまいには地主自身が交通事故に遭って重傷を負ったことから、建設を取りやめにしたらしい。

御祓いが行われ、この話は新しい地主の耳にも入った。自らが事故に遭うことを恐れた地主は工事を中断し、地蔵を祀ったそうである。

それから、Iさんをはじめとする子供たちが悪夢を見ることはなくなった。

「あそこはどうして家を建てようとすると、悪いことが起きるの?」

Iさんは疑問に思い、同居していた祖母に訊いてみたことがある。

「あの土地はね……昔、元の持ち主が、山で野田焼きにあったんさ」

明治か大正か、はっきりしないが、遠い昔のこと。例の土地を所有していたのは、今とは別の一族で、その当主は近くの山林も所有していた。彼は手伝いを頼んだ者たちと数人で山林の大きくなり過ぎた木を伐ったり、灌木や下草を刈ったあと、行方不明になった。

しかし、実はこのとき、山の中で不要な灌木や下草などをまとめて燃やしたのだが、当主も一緒に焼かれて死亡していたのである。後日、当主は真っ黒に炭化した焼死体となって発見された。どうやら手伝いに来た者たちが理由は不明だが、共謀して殺害に及んだらしい。けれども明らかな証拠はなく、不運な事故として処理されてしまった。当主の妻子は食うに困って、山林もこの土地も手放さざるを得なかった。それを今の地主の先祖が買い取ったのだという。

「だから、あそこに家を建てようとする度に、悔しさを伝えたくて祟りを起こすんだよ」

祖母はそう語ってくれたが、Iさん曰く、祖母の話が本当か否かは、既に確認する術がなく、定かでないという。とはいえ、周辺一帯に家が建ち並ぶ中で、この土地だけは一度も家が建たず、売られもせずに残っていることは事実である。現在、地蔵の脇には幟が立てられ、土地はいつも綺麗に掃除されている。

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