藤岡の怪電話(群馬県藤岡市) | コワイハナシ47

藤岡の怪電話(群馬県藤岡市)

高崎市在住のN子さんは昔、南隣の藤岡市にある宅配ピザ店で配達のアルバイトをしていた。その日、彼女は初めて注文があった家にバイクで向かったが、道が地図とは違っていて迷ってしまった。必ず三十分以内に届ける決まりがあり、こんなときは「すぐに配達先へ電話をかけて道を確認すること」と教えられていた。

当時はまだ携帯電話が普及していなかったので、電話ボックスまで移動する。腰に提げたポーチに小銭と注文相手の連絡先を記した伝票が入っていた。N子さんは受話器を手に取り、電話機に十円玉を数枚投入した。そして受話器を顎と肩の間に挟んで、伝票を取り出そうとしていると──。

受話器から呼び出し音が鳴り始めた。まだ電話番号を押していないので、本来なら鳴るはずがないのに鳴っている。不思議に思っていると、電話に出た者がいた。

「N子さん?N子ですよね!」

相手は中年の男の声で、はっきりと彼女の名前を口にした。気味が悪いので一旦電話を切ったが、あとから思うと母方の伯父の声とよく似ていたという。

N子さんが配達先の番号に電話をかけると、今度は注文した女性が出た。他に変わったことは何も起こらなかったのだが……。

半年後。

同じ藤岡市内でも別の町へ配達に行ったときに、なかなか見つからない家があったので、近くの電話ボックスに入ったところ、まったく同じ現象が発生した。

「N子さん?N子ですよね!」

男の声はやはり母方の伯父の声とそっくりであった。

「あの……あなたは?誰ですか?」

N子さんは、今度は勇気を出して訊き返してみた。だが、相手は答えず、「N子さん?N子ですよね!」と同じ言葉を繰り返す。気味が悪いのと、早く配達先に電話をかけなければならないこともあって、そこで一度電話を切った。

ふと、何者かに尾行されているのではないかと、心配になって辺りを見回したが、近くに他の電話ボックスはなかったし、彼女を見張っているような人物も見当たらない。それに彼女はずっと高崎市に住んでいるので、藤岡市には職場の関係者を除けば顔見知りも少なかった。

後日、N子さんは母方の伯父に会ったときにこの話をしてみたが、

「そらあ、俺じゃないよ。俺は〈Nちゃん〉と呼ぶし、大体、そんな改まった話し方はしないじゃないか」

伯父は目を丸くして驚いていたという。

これも藤岡市で起きたことだが、最近の話である。若い男性M男さんは両親や祖母と同居しているが、その日は両親が遠方に住む親戚の結婚式に泊まりで出かけて留守にしていた。M男さんの部屋は二階にあり、夜になると友達が泊まる予定で遊びに来た。午前二時過ぎ、そろそろ寝ようかと話していると、それまで点けてあったテレビが急に消えた。

「あれ?おまえ、テレビ消したのか?」

「いや、消さねえよ」

「じゃあ、何で消えたんだよ?」

二人が顔を見合わせたところへ、M男さんのスマートフォンの呼び出し音が鳴った。ディスプレイに〈自宅〉の文字と電話番号が表示されている。

「何だ?何で家にいるのに、家からかかってくるんだよ?」

怪訝に思いながら出てみると、相手は何も言わない。もしもし、と声をかけてみたが、依然として黙っているので電話を切った。不審に思って一階へ下りてみたところ、固定電話機の周りには誰もいなかった。しかし、コードレスの受話器が外れて床に転がっている。つい先程まで誰かが電話をかけていたとしか思えない状況であった。

そもそも両親が留守なので、今この家には彼らの他に祖母しかいない。M男さんは祖母の部屋に近づき、襖越しに「お祖母ちゃん」と声をかけたが、返事はなかった。

「ちょっと開けるよ」

襖を開けてみると、祖母は床に就いて寝息を立てている。玄関のドアや窓にもすべて鍵が掛かっていて、外部の人間が侵入した形跡はなかった。

ただそれだけの話である。だが、M男さんたちは気になって、その夜は眠れなかった。

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