予備校の友人(福岡市中央区) | コワイハナシ47

予備校の友人(福岡市中央区)

福岡市中央区には、一九九七年に閉校した「M」という予備校があった。

かつて予備校通りとして有名であった親不孝通りの端にあった予備校で、閉校となった現在でも親不孝通りのシンボルのように語られることもある。

この話は、私の高校時代の先生であり、当時Mに通っていた丸山さんから聞いた話だ。

地元の私立大学を目指していた丸山さんは、Mが所有する四か所の学生寮のうちの一つに入居しており、日々、切磋琢磨していた。

過酷な勉強漬けの毎日に嫌気がさし、鬱うつ状態になってしまう者も多く、そのまま実家に帰ってしまう者もいたという。

丸山さんの家庭は裕福といえる状況ではなかったので、日々、ビリヤード場でバイトをしながら予備校の授業料を賄っていた。机に向かって脳味噌をフル回転させて、そこからのバイトは体力的にも精神的にもキツイものであったが、日々の日常の中で唯一、友人達と食事をしながらバカ話をするのが楽しみだったという。

そんな友人の中でも一番仲が良かったのが田所さんという人で、難関大学を狙いながら二浪していたため、年齢は一つ上だったが、趣味がバイクいじりという点で共通しており、貧乏浪人だった二人は、中古で買った古びた250ccバイクの話でよく盛り上がっていたという。

ある日、丸山さんがバイトから帰ってきて部屋で寛いでいると、「ガタン!」と隣室から大きな音が聞こえてきた。

隣室に住んでいるのは田所さんで、日頃は住んでいるのかいないのかもわからないほど物音を立てない人なので、何事かと驚いたそうだが、勉強とバイトで疲れはピークに達しており、座布団に座ったまま、うつらうつら意識がとんでしまっていた。

ドンドンドン!

ドアをノックする音で目が覚めた。

時計を見ると午前二時を回っている。こんな時間に誰だろうと腹を立て、居留守を使おうかとも思ったが、ノックの音は間隔をあけて、断続的に続いているので、渋々出ることにした。

「はーい」

ムスッとした顔で扉を開けると、そこにはいつもの青いパジャマ姿の田所さんが立っていた。

「幽霊って信じるか?」

「こんな時間に何言ってるんですか?」

「幽霊を見たことあるか?」

「いや、ないですけど、どうしたんですか?」

「ちょっと俺の部屋に来てくれ」

(勉強のし過ぎで頭おかしくなったか?)

真夜中に押し寄せて、訳の分からないことを言ってくる田所さんに苛立ちを隠せなかったそうだが、取り敢えず隣の部屋に行ってみることにした。

田所さんは開いた扉を手で支えており、さあ先に入れと顎で指図する。

丸山さんが部屋に足を踏み入れると、そこには青いパジャマ姿の田所さんが天井からロープでぶら下がっており、足元には椅子が転がっていた。

「うわぁ!」

思わず声を上げて振り返ると、そこには誰もいなかったそうだ。

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