母校の文化祭(群馬県渋川市) | コワイハナシ47

母校の文化祭(群馬県渋川市)

群馬県北部、渋川市出身のY毅さんは、高校時代に軟式野球部に所属していた。二年生のときに文化祭が行われることになったが、運動部は何も発表するものがないことから、お化け屋敷を催す企画を立てた。しかし古株の教師たちから、

「お化け屋敷だと。そんなもの、下らねえ」

「軟式野球とは関係ないじゃないか。駄目だ駄目だ」

と、冷たく却下されてしまい、悔しい思いをした。

高校を卒業した翌年の秋、Y毅さんはかつてよく面倒を見ていた軟式野球部の後輩たちから文化祭に招待された。お化け屋敷を開催するのだという。保守的な古株の教師が定年退職や転勤で全員いなくなったことから、すんなり許可が下りたらしい。

Y毅さんは懐かしさとうれしさに胸を躍らせながら、母校へ向かった。同期で卒業した男友達も一緒に行くことになった。母校に着いた二人は受付を済ませると、お化け屋敷が催されている教室の戸を開けて中に入った。だが、次の瞬間、友達が唐突に、

「ああっ……」

驚いた声を発して、その場に尻餅をついてしまった。

「おい、どうした?」

「膝が!膝が、急に……」

友達はうろたえていた。立ち上がろうとしたが、なかなか立てない。膝がまっすぐに伸び切って硬直してしまい、曲げることができないのだという。何度も立ち上がろうと試みたが、どうしても叶わなかった。

「な、何だよ、これ?まずいんじゃないか、医者に診てもらわないと……」

Y毅さんも戸惑っていたところへ──。

突然、火災報知機のベルが鳴り響き始めた。

そのけたたましい大音響に、飛び上がらんばかりに驚いたY毅さんは、友達に肩を貸してどうにか立ち上がらせると、抱えるようにして一緒に廊下へ逃げ出した。教室にいた来場客のみならず、幽霊や妖怪に扮した後輩たちも慌てて廊下に飛び出してくる。呆気に取られたY毅さんと友達は、廊下に座り込んでしまった。

後輩たちが様子を見に走り、火災報知器を鳴らしたのが誰なのかはわからなかったが、校内で火災は発生していないことが判明して、ようやく騒ぎは治まった。

ところが、その頃になって、隣の教室を使っていた他の部活動の生徒が、父兄と思われる大人の客を見送りがてら教室から出てきた。どちらも呑気そうに笑っている。

Y毅さんが意外に思って声をかけると、その二人は怪訝な顔をした。

「火災報知器?いいえ、そんな音、聞いていませんよ」

あれだけ大きな音が隣室ではまったく聞こえていなかったというのである。隣室に特別な防音設備があるわけではないので、Y毅さんと友達は再び呆気に取られた。

ただし、まもなく友達の足は何事もなかったかのように快復して、自力で歩けるようになった。前にもあとにも経験がないことで、原因は友達自身にもわからなかったそうだ。

なお、のちに後輩たちから知らされたのだが、火災報知器の音を聞いていたのは、お化け屋敷の教室にいた人々だけで、他の教室や廊下などにいた人々は誰も聞いていなかったらしい、とのことである。

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