二年一組の黒い影(岩手県花巻市) | コワイハナシ47

二年一組の黒い影(岩手県花巻市)

これもキョウコさんが花巻にいた頃の話。

彼女が通っていたY中学校では、「二年一組」の生徒だけが黒い影を見るのだという。

その教室は、本館ではなく離れの一階におかれている。そして同組の生徒だけがたびたび、廊下に面した窓ガラスごしに、黒い影が歩くのを目撃してしまうのだ。

影はきまって午後にだけ現れる。窓の外を横切って、戸の陰に隠れた後はさっぱり消えてしまう。

二年一組の教室からしか見えないし、別クラスの生徒の目にも入らない。本当に黒いだけで顔もなにも不明だが、サイズは大人ほどなので、一瞬、教師がやってきたと勘違いするものもいた。

キョウコさんは何度もそれに出くわしている。姉や先輩たちも同様のことを証言しており、年代をこえて伝わっている噂のようだ。

いや、「噂」というカテゴライズは適さないだろう。なにしろ同じものを見ている人数が多すぎる。それはもう「そういうものがいる」という、クラス内・学校内での常識にすらなっていた。

二年一組の教室の窓ごしに、廊下をゆっくりと歩く、人の形の黒いもの。

キョウコさんのクラスメートだけでも、三学期に入る頃にはほぼ全員が一度は目の当たりにしているのだ。

しかしその中でたった一人、A子だけは影を未見のままだった。授業中や休み時間、クラス内の数人が「また通った!」などと騒いでいる時も、キョトンとそちらを見つめるだけ。タイミングが合わず目撃していないだけでなく、どうやら、そもそも彼女の目にはソレが映っていないようだ。

ある冬の昼下がり、キョウコさんたち数名が、二年一組の教室を掃除していた時。

ふと気がつくと、A子がホウキをはく手を止め、ぼんやり立ちつくしていた。

どうも、なにかを見つめているようだ。視線の先は、壁の窓へと向いている。

その先では、例の黒い影がやはり廊下をゆっくり進んでいたのだ。

(あ、いつものやつだ)

A子に目を戻すと、彼女の首がゆっくり左から右へと動いている。

どうやら影を追っているようで、こちらが横目にうかがうソレの移動と一致している。

(あれ?A子ちゃん見えてる?)

そう思っているうち、いつものごとく影が戸の陰へ入り、視界から消えていく。

次の瞬間、ドサリ、とA子が後ろ向きに倒れた。

慌てて駆け寄ると、口から泡を吹きつつ痙攣しているではないか。

白眼をむいた表情からして、明らかに失神してしまっている。

「ちょっと、大丈夫!?A子ちゃん!?」

その場にいた者たちで声をかける。急いで呼び出された担任が到着した頃には、彼女も意識を取り戻していた。

涼しい顔で、なんで自分が床に寝ているのか、逆にこちらが問いかけられた。倒れてしまった理由については、いっさい見当がつかないという。

そして廊下を横切った黒い影についても覚えがないようで、

「なに言ってんの?そんなのぜんぜん見てないんだけど」

と、首を横に振るだけだったそうだ。

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