田代海岸の謎の声(鹿児島県熊毛郡屋久島町船行) | コワイハナシ47

田代海岸の謎の声(鹿児島県熊毛郡屋久島町船行)

屋久島三日目、船釣りは今日で終わり。夜の心霊探索に行けるのも今日が最後だ。

この日の釣果は上々で、意気揚々と港に帰りつき、早速いつもの居酒屋で捌いてもらおうと魚を持っていく。

そして、宿に戻ってシャワーを浴びてから玄関前に集合し、気分良く居酒屋に向かいながらも、私は早速今夜のオファーを始めた。

「えぇーっと、今日は最終日という事で、もちろん心霊探索に向かいます。行く人っ!」

「……」

長老夫婦は行くはずもないが、丸ちゃんと井上はハードスケジュールで疲れ切っており、今夜くらいは早々と床に就こうと目論んでいるようだ。

「よく考えてくれ! 屋久島に来ることができることは、今後の人生であと何回あるかわからない! そんな貴重な時間を寝て過ごそうというのか!?」

「そうですよね! 俺は行きます!」

よしよし、丸ちゃんは無反応で、疲れすぎたせいか夏バテしたブルドックのような顔をしているが、井上はまだ二十代前半という事もあり、私の期待に応えてくれた。

皆が居酒屋でたらふく酒を飲みながら馬鹿笑いしているのを冷静に眺めつつ、私は心霊探索が近づくにつれて、アドレナリンが分泌されて神経が高ぶってくるのを感じていた。

最終日に目指したのは「田代海岸」だ。

枕状溶岩が広がるその光景は観光地として親しまれており、明るい時間帯ならば家族連れが軽く水遊びなんかするのには、ちょうどよい場所だ。

しかし、云われは不明なのだが、この場所も心霊スポットと呼ばれているようで、車を降りて海岸まで歩いていかなければならないのだが、その途中の林道に幽霊が出るという噂がある。

車は林道の手前までしか入ることができないので、少し開けた場所に停車し、井上と二人で探索の準備を始める。

結論から言うと、怪奇現象は一切発生しなかった。

しかし、これは現場では気が付かなかったというだけで、後にこの時撮影した動画を見て鳥肌が立ってしまった。

以下に、実際の音声をそのまま書き出してみることにする。(『』が原因不明の少女のような声である)

濱「屋久島の田代海岸です。海岸まで抜ける途中の砂利道で幽霊が出るという噂があります。昨日は四人で心霊スポットに行ったのですが、今日は四人での検証となります。」

『ウンッ!』

濱「わかりにくいかもしんないけど、ごつごつした岩がいっぱいあって車が通れません。徒歩しか行けない道です。ちょっと暗いのでナイトモードで、これなら映るな。オッケー。もしかしたらヤクシカやサルがいるかもしれないです」

『エヘッ』

濱「だいたいここは、車を停めてきた場所から二百メートルほど砂利道が続いており、海岸よりもこの林道で霊が出るという話です」

『イヒッ』

濱「海の音が聞こえてきたね」

井上「はい」

濱「もう半分くらい来たよね」

井上「そうですかね。大分来ましたね」

濱「海の音が近づいてきた。おっ、出ました! 田代海岸です。今日は投光器を忘れたので暗いですが、ここが田代海岸です。かなり足場が悪く、ビチョビチョですね。車両立ち入り禁止ですが、かなりタイヤの跡があるね、観光客が入ってるんかな?」

井上「そうみたいですね」

濱「ということで、海岸に出たのでまた折り返そうと思います」

『エヘッ!』

濱「足元に気を付けてね。結構グショグショやけん」

井上「はい」

濱「今日は釣り頑張りすぎて、まだ手にダメージが残っとう」

『ウ〜ン』

井上「でも、いろんな魚がいて楽しいですね」

濱「うん。屋久島は良い場所です」

『ウンッ!』

濱「井上、昨日と比べて今日はどう?」

井上「やっぱり四人から二人になったら違いますね。今日の方が怖いです。それに雰囲気がこっちの方が怖いです」

濱「ちなみに、もうすぐ明かりが見えてくると思うんですが、車のエンジンとライト点けっぱなしなんで、これは車の明かりです。エンジン音も入ってしまうかもしれません」

『フ〜ン』

濱「まわりからポツポツ音はするけど、多分、これ森の中なんで鳥とか野生動物でしょう。あと、この葉の落ちる音……だとは思います」

『ウフッ』

濱「ここから先の方に見えているのは自動車の明かりです。まあ二百メートルぐらいなので、すぐに戻ってきてしまいました」

ここからは二分ほどかけて、話しながら車まで戻るのだが、その部分には怪音と思わしきものは確認できなかったので割愛する。

如何だろうか?

『』の部分はすべて女の子の声に聞こえる。しかし、現場にいたのは私と井上、大人の男二人である。そして、声は私の話に反応するようにして入っているのだ。

やはり、この場所には噂通りこの世ならざるものが潜んでいるのだろうか。

田代海岸の探索を終えた我々は宿に戻り、缶チューハイを飲み干すとベッドに倒れ込んだ。

そして翌日、名残惜しみつつ屋久島を後にした。

しかし、その一か月後の六月頭のことだ。

私は一人で屋久島の地を踏みしめていた。

前回は船釣りに来ていたのだが、今回はショア(岸)からのGT(ロウニンアジ)を狙うためと、前回不可思議な現象が起こった場所を再訪するためだ。

しかしながら、四泊五日と前回よりも多く日にちを設定していたにもかかわらず、釣りの方はボウズで終わってしまった。

そして、肝心の心霊スポットであるが、連絡先を交換していたマミちゃんに協力してもらい、前回訪れた場所を一晩で全て撮影してまわった。

しかし、屋久島灯台では一切声は聞こえないし、田代海岸でも前回と同じように撮影したが、女の子の声は一度も入っていなかった。

色気を振りまいて男を翻弄ほんろうするが、いざ近づくとハラリとかわす小悪魔のように、この世ならざる者たちは私を魅了してやまない。

これからも私の心霊探索は続いていくことだろう。

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