植え込み(東京都) | コワイハナシ47

植え込み(東京都)

十月中頃、アキコさんは大学時代の女友達四人と、ディズニーランドに遊びに行った。車でアクセスしているので、終電の心配もいらない。閉園まで楽しんだ後は皆で食事をし、帰路についた頃はもう深夜一時を過ぎていたという。

アキコさんの運転で、まず江戸川区に住んでいる友人を送り届けることに。その家の近所、S公園付近の小道を走っていた途中である。

「あそこ、なにかない?」

助手席に座っていた子が、ふいに歩道を指さした。確かに、進行方向少し先の植え込みがライトで照らされ、不自然な物体が浮かび上がっている。

車道を向いたマネキンの頭が、土から「はえる」ように置かれていたのだ。

そこは植え込みといっても、背の低い雑草がところどころ出ているだけなので、マネキンの首元まですっかり視界に入ってくる。

車の速度を落として通り過ぎながら、皆でじろじろとそれを見やった。髪はぺたっとはりついているような七三、肌はどす黒く、五十歳前後の男の頭部。くたびれた顔形からして、理容・服飾に使うようなマネキンとは思えない。

「誰かの悪ふざけ?」「ハロウィーン前だから、それ関係じゃないの」

そんなことを話し合いつつ、一人を公園の近くの家に届け、また来た道を引き返す。車内の三人はまだ「男の首」の話題でもちきりだ。

「次はもっとちゃんと確認しようよ」

やはり頭部はそのままの状態に置かれていたので、車を横付けにして観察する。見れば見るほど、その辺にいる疲れた壮年サラリーマンがそのまま埋まっているようだ。とはいえ体を隠す場所などないし、植え込みにしても首から下が埋まるほどの土はない。正体はわからずじまいだったが、時刻も遅いのでもう出ようと発車する。

「映画の小道具なのかなあ」「ハロウィンにしては、普通のおじさんの顔ってどうなのー!」

そう助手席と盛り上がっている最中、ふと、後部座席の友人がうつむいて黙りこくっていることに気がついた。「寝ちゃった?」と声をかけると、その子は真っ青な顔をこちらに向けた。

「あれ、ぜったい造り物じゃない……」

「え?」

「……だって、あの男の目、動いてた」

彼女の席は、男と真正面から向き合う位置にあった。だからその眼球が、自分たちの車を追って動いているのが、ハッキリ見えたのだという。

やっぱり、あれは本当の人間の頭だったんじゃないか。誰かが生き埋めにされていたのではないか。不安になったアキコさんは車を停めた。しかし引き返し、車から降りて確認する勇気はない。ともかく事件には違いないだろうと、警察に連絡してみる。

「詳細な住所を教えてください」という向こうの質問に、助手席の友人が出したグーグルマップで現在地情報を伝える。「すぐ確認しにいくので、折り返し連絡します」との言葉通り、通話を切ってからわずか十分ほどで返信がかかってきた。

「確認しましたが、なにも異常はありませんでした。おっしゃられた男の首というのも、どこにも見当たりません」

もちろん掘り返したような跡もないという。

イタズラと疑われている様子だったので、素直に了承して電話を切った。

それからは誰も一言も発さないまま、車を走らせ帰路についた。

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