屋根裏部屋(新潟県) | コワイハナシ47

屋根裏部屋(新潟県)

島田さんが小学四年生のころだというから、今から二十年ほど前のことになる。

毎年夏休みになると、母親の実家がある新潟で過ごすのが恒例になっていた。

その年も夏休みに入ってすぐに新潟へ出発した。

父親の運転する車で東京から向かう長距離の旅である。途中休憩を挟みながら、五、六時間ほどかかる。

優しい祖父母に会えることも楽しみだったが、この日は夏祭りに連れて行ってもらうことになっていたので、道中、島田少年のテンションは跳ね上がりすぎてまったく眠たくならなかった。

昼過ぎに新潟に到着すると祖父母が笑顔で迎えてくれた。

「寝ておかないと祭りで眠くなるよ。少し寝ておきなさい」

母親に言われ島田少年は屋根裏へ続く梯はし子ごを上った。

昼寝をするのは決まってその屋根裏部屋だった。

急な黒い梯子を手と足とを両方使って上がる。

真夏の盛り、上がれば上がるほど屋根からの熱気が伝ってくる。

額の汗をぬぐいながらようやく梯子を上りつめ、姿勢を正したときだった。

目の前に、色鮮やかな着物を身にまとった若い男女が、こちらに背を向けて立っている。

「あのう……こんにちは」

島田少年が声をかけると女性がゆっくりと振り向き、驚いたような表情で首をかしげる。彼女は着物を幾重も羽織っており、手に持った扇子をひとあおぎすると、にっこりと笑って優雅にお辞儀をした。色白で美しく、着ている着物も鮮やかで、その美しさに目のくらむ思いだった。

女性の隣にいる男性は島田少年が見たこともないような長い黒い帽子を被っていた。こちらを振り向いた彼も、女性と同じように肌が真っ白だった。

(いったい、このひとたちは誰なんだろう)

不思議に思いながらその男女と目を合わせていると突然、全身に鳥肌が立った。理由はわからなかったが(このふたりとは一緒にいてはいけない)と感じたのだ。

島田少年は慌てて梯子を下りた。

「じいちゃん、ばあちゃん!」

夢中で叫びながら客間へ向かう。

「上の部屋にいるの、いったい誰なの!」

祖父母は島田少年の剣幕に顔を見合わせると、上には誰もいないよと言う。

いたんだもん、と言う島田少年とともに、祖父母と母親まで一緒に屋根裏へ上ってみたが、そんな男女はどこにもいなかった。

ただ、そこには小さな古い雛人形が仕舞われていたという。

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