ダイバー(静岡県伊豆市) | コワイハナシ47

ダイバー(静岡県伊豆市)

佐竹さんは、ドラマや映画などの現場で撮影監督を務め、また水中カメラマンとしても活躍している。

もともとダイビングのインストラクターだったそうだ。

今から二十年ほど前。

佐竹さんはダイビングのインストラクターの仕事で伊豆にいた。

伊豆の土肥金山の近くに絶好のダイビングスポットがあり、その日はそこへ六人の友人を案内することになっていた。

ほかには誰もダイビングに来ている人はいなかった。

ダイビングスポットは土肥金山から南へ下り、「K岬」と呼ばれるあたりにある。

佐竹さんと六人はウェットスーツと必要器材を身に着けると潜水した。

このあたりには漁礁が沈めてあり、そこで記念写真を撮影することができる。

水深十メートルくらいまで来ただろうか。漁礁のポイントが見えてきた。

色とりどりの魚たちが泳いでいる。魚たちは人慣れしており、まったく警戒することなくまわりへ集まってきた。

水中ではもちろん会話はできないので、佐竹さんはあらかじめ教えていたサインで意思疎通をはかる。写真撮影をするために、友人たちに集まるよう指示した。

そのとき、疑問を感じた。

(多い……)

このエリアにいるのは佐竹さんのほか六人の友人だけのはずだ。

しかし漁礁の向こうを六人とは別なふたり組がゆっくりと泳いでいく。泳いでいるというよりも真横にすべるように移動している。

(なんだ、あのふたりは?)

佐竹さんは不思議と胸騒ぎがしたが、記念写真を撮り終えるといつの間にかそのふたりの姿は消えていた。

陸に上がってからもあのふたり組のことが気にかかる。

友人たちに、

「なぁ、水中でふたり組、見なかったか?」

思いきって聞いてみると、皆そろって「見た」という。

それならば実在の人間かと様子を見ていたが、陸に上がってくる気配もない。やはりそんなふたり組は存在していなかった。

その後、友人たちを連れてホテルへ戻る途中、道端で突然ひとりの老人に呼び止められた。

「あんた、視ただろ」

突然のことに驚いた佐竹さんは「何が?」と、ぶっきらぼうに答えた。

「あれはな、しょっちゅう現れるわけでないし、誰にでも視えるわけでもない。たまたま会っちゃっただけだろうから気にしなさんな」

そう言って、うっすらと笑いながら去って行ったそうだ。

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