バンジー(東京都新宿区) | コワイハナシ47

バンジー(東京都新宿区)

縁あって私は歌舞伎町にある「怪談ライブBAR」で働かせていただいている。ここでは日替わりで怪談師が出演し、一時間に一度、十五分ほどの怪談ライブを行う。

あの日は同僚の怪談師、村上ロック氏と共に遅い時間帯のライブを任されていた。歌舞伎町という土地柄、深い時間でもお客様は来店される。

それは、深夜二時台のライブでのこと。

この回のステージはロックさんが担当し、店内には最前列に若い女性客が二名、後方の座席には男性客が五名いて、私は最後方の席でステージを見ることにした。

この回でロックさんが語り始めたのは、バンジージャンプにまつわる怪談だった。

高所恐怖症の青年が、得体の知れぬ何かによって飛び降りを促されるという内容のものだ。

話も佳境に入るころ。

この話の肝となる「スリー、ツー、ワン、バンジー!」という台詞があるのだが、ロックさんが「スリー、ツー」まで言ったそのとき、店外から、

「きゃあッー!」

悲鳴が上がった。

店内にいた全員がその声を聞いた。

それまで全員がロックさんの話に集中していたのだが、悲鳴が聞こえたと同時に女性客二人が携帯を取り出し何かを見はじめた。

ステージが終わると女性客はすぐに席を立ち上がり「帰ります」と言う。

まだ残り時間はあるうえ、ふたりの様子がおかしなことに疑問を感じた店長が声をかけたところ、

「いや、ちょっと、そこで、人が。怖いんで帰ります」

そう言うなり慌しく帰って行った。

このご時世、今起きたことはすぐに調べることができる。

いったい何が起こったのか調べてみると、先ほどロックさんが「スリー、ツー」と言った直後、このビルの斜向かいのビルから男性が飛び降り自殺をしたということだった。

あまりのタイミングに、ロックさんもほかのお客様もしばらくの間は放心状態になってしまっていた。

単なる偶然なのかもしれないが、以来この話は控えるようにしているそうだ。

シェアする

フォローする