初恋のひと~卒業アルバムにいない人(広島県) | コワイハナシ47

初恋のひと~卒業アルバムにいない人(広島県)

東京でひとり暮らしをしていた涼さんは、久しぶりに広島の実家へ帰省すると、高校時代に仲の良かった女だち数人と食事をすることになった。

涼さんは男性だが、むかしから女性のともだちが多い。

十八年ぶりの再会で美由紀さんがアルバムを持参してきていた。

「おっ、さすが美由紀。相変わらず気が利くな」

アルバムをめくると、徐々に遠い高校時代の記憶がよみがえってきた。

涼さんは高校一年では五組で、このクラスは男女の仲がとても良くほかのクラスからも羨ましがられるほどだった。

その仲の良い五組の教室に、休み時間になるといつも必ずやってくる女生徒がいた。

彼女は三組だったが、自分のクラスに馴染むことができないのだという。

この女生徒は涼さんのクラスの美由紀さんと仲が良かったので、涼さんも自然と彼女と会話するようになっていた。

彼女の名は「涼子さん」といって、涼さんと漢字が一緒であった。別のクラスでありながらも仲が良くなり、しだいに彼女のことが気になるようになっていった。

彼女とはよく会話もするし、夏休みには一緒に補習を受けたこともあったのだが、学校の外で会ったりデートをするようなことはなかった。

どうしても誘う勇気が出せずにいたのだ。

結局、気持ちを伝えられないまま卒業をむかえた。

十八年も前のことだが思い出話に花を咲かせているうちに、涼さんたちは当時に戻ったようにはしゃいだ。

クラスで一緒だったメンバーや先生の名前が次々に出てくる。

「そういえば涼子ちゃん。今どうしているかな」

涼さんがおもむろに言うと美由紀さんが、

「涼子ちゃんて誰?」と言う。

「え?美由紀仲良かったじゃん。三組の本田涼子ちゃん」

「誰それ、知らない」

涼子さんはおとなしい人だったが、毎日のように五組まで通ってきていた。

ましてや美由紀さんは最も仲が良かったはずである。知らないはずはないと涼さんはアルバムをめくっていく。一ページ……二ページ……三ページ……。

いない。

どのページを探してみても、涼子さんの写っている写真はない。

涼子さんがいた三組のクラスのページにも姿がなかった。

一年から三年までの思い出のページ。

部活動や行事のページ。

いない。どこにもいない。

どこを探しても涼子さんの写っているページはない。

「本田涼子なんて人いなかったよ。涼君が勝手に記憶を作り出したんじゃない?」

そう言われ涼さんはムキになって、

「そんなことない。いたんだよ」

と答えたが、その場にいる全員が「本田涼子」というその女性を知らなかった。

腑に落ちないまま解散し、電車に乗り込んだ。

座席に腰をかけ腕組みをした瞬間、ふとあることを思い出した。

卒業式の日、教室に涼子さんがやって来てこう言った。

「涼君。私、卒業アルバムに載ってないけど、私のことずっと忘れないでいてね」

その後、友人や先生にも確認をしたが「本田涼子」を知るものはなかった。

「自分が存在していると思っていた人物が実際には存在していなかったって話、怪談ではよくあるパターンじゃないですか。都市伝説みたいな。でもね、それってそれだけ経験した人がいるってことで、作り話とは言いきれないと思うんです。だって実際、俺が経験者ですから」

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