置き石(兵庫県) | コワイハナシ47

置き石(兵庫県)

私が小学生の頃のこと。

家族とニュースを見ていた。

線路の上の置き石が原因で、脱線事故が起きたというもの。

「悪いことする奴やっちゃなあ」と私がつぶやくと、父と母の目が私に向けられた。

「えっ?なに」

「あんなに叱られたのに、なんで覚えていないの」と母。

これ以上ないくらいにきつく叱られたらしいが、まったく覚えていなかった。

私は兵庫県の尼崎市にある社宅で育った。近くに武庫川という川があり、そこを渡る今のJR、当時は国鉄東海道線の長い鉄橋と、それと交わる土手に踏切があった。

当時、四歳か五歳の私は、近所の小学生たちに連れられ、その踏切のレールの上に釘くぎや五円玉を置いてペチャンコに変形させたり小石をレールの上に置いて電車がそれを粉々に砕く遊びに熱中していた。

ある日、幼い私はヘルメットに作業服姿の男性に連れられて帰ってきた。

「この子はおたくのお子さんですか」

「ええ、うちの子が何か?」

「えらいことしよったんや。叱ってやんなさい」

事情を聞くと、この人は線路作業を終えて、鉄橋を渡って対岸の西宮市側に帰ろうとしていた。ところが、はたと、忘れ物をしたことを思い出した。

あわてて鉄橋を歩いて尼崎方面へと戻った。ところが、渡り切って踏切に出た途端に一体何を忘れたのかが思い出せなくなった。

思い出そうとあたりを見回していると、踏切の脇に子供がいる。

レールの上に小さい石を置いて、次にそれよりやや大きい石を置いて、だんだんと大きな石を並べている。そのうえ「よっこらしょ」とばかりに両手で抱え上げるほどの石を持ち上げて線路に置こうとしていた。

「こら、何しとるんや!」

この作業員は、あわてて子供のところに走って石を取り上げると、ひどく叱りつけた。そして家まで案内させたのだという。

「あんな大きな石、電車が踏んだらひとたまりもない。大事故になるとこや。そやけどな、あんたんとこの子、ごっつい運がええで。こんなことわしもはじめてや、ほんま大惨事になってたとこや」

その後、私は父親からいやというほど殴られたらしいが、私はまったく覚えていない。

母親は、何かがこの子を守ってくれている、と思ったらしい。

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