海沿いの家(鹿児島県熊毛郡屋久島町) | コワイハナシ47

海沿いの家(鹿児島県熊毛郡屋久島町)

グラスに入った焼酎の水割りを飲み終えたママは、淡々と話し始めた。

「あなたたち釣りに来たんでしょ? いっぱい釣れた? 屋久島は山登りだけじゃなくて釣りも人気だからね。この子も釣りするのよ」

そう言って、照れたような笑いを浮かべた屋久島美人のマミちゃんに視線を移す。

「でもねぇ、気を付けないと、この島の周りは潮の流れが速いみたいで、海に落ちたら死体は上がってこないからね。それに、屋久島の山は傾斜が激しいから、滑落したら死体が見つかることは少ないみたいよ。今までに、山登り行きますって言って、そのまま帰ってこなくて、死体も見つからないなんて言う話はたくさんあるからね。人気の観光地ではあるけど、実は見えないところに死体がゴロゴロあったりしてね……」

私へのサービスのつもりだろうが、喜んで聞いているのは私一人で、場の雰囲気はすっかり冷めてしまっている。しかし、怖い話をするにはいい雰囲気になっている。それを狙ってかはわからないが、ママの独断場は続いた。

「今は孫達とこの店の近くで楽しく暮らしてるんだけどね、昔は海沿いの古い家に住んでてね、昼間はすぐ海に行けるからいいけど、夜になったらものすごく気持ち悪いの。何が気持ち悪いかって、風が気持ち悪いのよ。窓を開けたまま寝てると、生暖かくて潮臭い風が吹き込んでくるでしょ? そいつが体に纏わりついてきて全身鳥肌が立っちゃうのよ。だから、普段は夜になると窓は閉めて寝るようにしてたんだけど、ある時、窓閉めるの忘れてしまってね……」

「幽霊が出たんですか?」

「幽霊ならまだいいわよ。その時は窓開けたままで寝たんだけど、うつらうつらして自分でも寝てるか起きてるかわからない状態になった時に、『アレ』はやって来たのよ」

全員が静まりかえって話に聞き入っている中、一人だけ寝入ってしまった長老のイビキが「グォー」と響く。

ママは気にせずに続けた。

「生暖かい風が吹き込んできたと思ったら、一気に体を包まれて動けなくなったの。そして、部屋の中に『気配』が充満したかと思うと、ガタガタガタガタって部屋の中の物が揺れだして、本とかが次々に落ちてきてね」

「ポルターガイストってやつですか?」

「多分そうだと思う。すぐにテレビ点けてみたけど、地震速報は流れてなかったしね。ひとしきり揺れ続けた後、何事もなかったように静かになったんだけど、もう私は、しばらく放心状態になっちゃってね……とりあえず、部屋の中の物を片付けようと思って散乱しているものを拾うと濡れてるのよ。落ちてるもの全部同じようにグッショリしててね。まあ変なことがあったのはその一回だけなんだけど、海沿いの家から引っ越してからはそんなこと一回もないし、土地的に悪いものがあったのかもしれないね」

そこまで話すと、私達のグラスが空になっているのに気づき、おかわりの準備を始めた。

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