真っ赤な訪問者(東京都東村山市) | コワイハナシ47

真っ赤な訪問者(東京都東村山市)

Tさん一家が東村山市に引っ越した。

マンションの五階の角部屋だった。

引っ越して間もないある昼間、ピンポーン、とチャイムが鳴った。

(誰かしら)

引っ越ししたてなので、訪ねてくる人に心あたりがない。

ピンポーン、ともう一度。

妙なセールスだと困るので、ドアののぞき穴からそっと様子をうかがった。

誰もいない。

「あら、変ねえ……」

そう思いながら居間に戻ると、ピンポーン。

再びのぞいてみる。

誰もいない。

戻ると、また、ピンポーン。

(そうだ)と玄関横の子供部屋に入って外の廊下に面したカーテンを少し開けた。そこから見れば玄関口に立っている人が見えるはずだ。

ドア前には人の形をした真っ赤なものが立っている。

(わっ)

一瞬でカーテンを閉じた。

(なに、あれ……)

怖くてよくは見なかった。だが、人の形をした全身真っ赤な塊がそこに立っていた。その残像が目に焼きついて離れない。

ピンポーン。

また、玄関のチャイムが鳴る。

ピンポーン。

音のたびにビクッと身が縮む。

(一体あれは、何……)

気付かれたくなくてそっと、子供部屋を出た。すると玄関ドアの上にある採光用の化粧ガラスに、真っ赤な頭と張り付いた両手が見える。二メートルは超えている!

もう玄関を見たくない。

どうしよう、と家の中でじっとしていると、鍵かぎの開く音がして娘さんが帰宅した。

あわてて玄関に行って、大丈夫?何もいなかった?と聞いた。

「何が?」と言う娘さんに、つい今しがたのことを話すと笑われた。

数日後、友人夫婦が引っ越し祝いに来てくれるという。

ピンポーン、と約束の時間にチャイムが鳴った。

「はーい」と、出てみるとご主人ひとりだけがそこにいる。

「あら、奥さんは?」

「車で一緒に来たんだけど、帰った」と言う。

「どうして?ふたりで来るって約束だったのに」

「うん、そうなんだけどね。マンションの下まで来てオレを下ろすとあわてて帰っちゃった」

やがて、宴もたけなわとなった。やっぱり奥さんにも来てほしい。そう思ってTさんは電話してみた。

すると「あのねえ、ちょっと言いにくいことなんだけど……。主人と一緒にマンションの下までは行ったのよ。それで五階のあなたの部屋を見上げたら、大きくて真っ赤な人が玄関のところにいて、身体を前にくの字に曲げて、中をのぞき込んでいるの。主人にはそれが見えないらしくて……。見間違いと思うんだけれど怖いから帰っちゃったの。気を悪くしないでね」

人に相談すると、火事の前ぶれかもしれないと言われたので、火の元には充分注意して暮らしたという。

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