ドアの前(静岡県伊豆市) | コワイハナシ47

ドアの前(静岡県伊豆市)

落語家のS師匠が、ある撮影の打ち上げに参加した。

場所は伊豆のホテル。

夜中、部屋の電話が鳴った。

上の部屋に泊まっている共演した女優のCさんからだ。

「ねえねえ師匠、今から、私の部屋まで来てくれない?」と言う。

「どうしたの?」

「今ね、ドアの前に人が立ってるの」

「誰が?」

「わかんない。ドアの下の隙間に足の指先が見えるの」

「よしわかった」と師匠は部屋を出た。

エレベーターで上がると気づかれると思い、階段を上がって廊下に出た。

誰もいない。

そのままCさんの部屋の前まで行ってドアをノックした。

「わたし、Sです」

ガチャとドアが開いて、中からCさんが顔を出した。

「誰もいなかったよ」

「そんなハズないよ。だって今の今までずっと足があったのよ。ずっと私それだけを見てたのよ。で、足がスッと引いたと思ったらノックと師匠の声がしたのよ」

そんなバカな、と思いくわしく聞いた。

最初、コンコンとドアをノックされて、「はい」と出たが誰もいない。しばらくしてまたコンコン。出たがまたいない。それが三回続いた。

怖くなって四回目のノックは無視したところ、ドアの隙間に足の指先が見えているのに気がついた。

ノックで開けた時も下にその足があったのかと思うと怖くなったのだという。

「本当なの。おかしいわね。でも、これでいなくなったかもしれない。ありがとう」

「いえいえ、とんでもない」

S師匠が自分の部屋の前に戻った途端、ドアの中から電話の音がした。

「ごめん、もう一回来てくれない?」

「また?」

「うん、今、ドアの隙間に足の指と人影も見える。今、マネージャーにも来てもらうよう電話したの。さっきは逃げられたのかもしれないから、もう一度来て」

マネージャーはCさんの上の階、師匠は下の階、つまり廊下をはさんだ左右の階段から行けば、挟み撃ちできるだろう、というわけだ。

「わかった」

師匠は急いで、階段を上がった。すると廊下の向こうにマネージャーがいて、「誰もいません」と首を振っている。

師匠も首を振った。

「やっぱり誰もいないよ」

「でも、今の今まで、そこに足があったのに!」

Cさんは怖くなって、メイクさんの部屋で寝た。

その足はまるで風呂上がりのような男の足だったという。

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