郵便物(岐阜県) | コワイハナシ47

郵便物(岐阜県)

岐阜県に住むHさんの元に郵便物が届いた。

差出人は知らない名前。住所は愛知県となっている。

何だろう?

開封すると、紛失したHさんの財布が入っていた。

一週間前の夜、Hさんは彼女をバイクのうしろに乗せて肝だめしに行った。

行き先はボウリング場の廃墟。

目的地に着いて、さあこれから入ろうという時だった。

近くにいた若者の一団が彼女を冷やかしたことから、喧嘩になった。

そこへ自転車で通りがかった老人が仲裁に入ってくれて、何とかその場を収めてくれた。

喧嘩は収まったかもしれないが、腹の虫は収まらない。

気持ちが荒れに荒れたまま家に帰って、はじめて財布がないことに気づいた。

おそらくその喧嘩の時に落としたのだろう。

それをこの差出人の人が拾って送ってくれたのだ。

中身を確かめると、お金もカードも全部無事だった。しかし、名刺も免許証も入っていないのに、どうして自分の住所がわかったのだろう。

それになぜ愛知県からなんだろう?喧嘩した連中の中に愛知から来た奴がいたのか……。

だとしてもお礼くらい言わなければ、とHさんはその住所と名前を頼りに電話番号を調べてみた。すると、該当する住所にあるのは老人ホームで、その名の個人宅は存在しなかった。

老人ホームに連絡してみると、対応に出た受付の人に、その人とどのような関係かと尋ねられた。

事情を説明すると、「その名前の人はいたにはいたが、何かの間違いではないか」と言う。

間違いのはずはない。手元にはその人から発送された郵便物があるのだ。いたのならば現在の連終先を教えて欲しい、と食い下がった。

押し問答のあげく、「そんなことを言われても、その方は一カ月前に亡くなられました」と言われてしまった。

え?亡くなっている?そんなはずは……。

言葉を失っていると、悪戯いたずらだと思われたのだろうか。「本当ならその封筒が見てみたい」と言われた。

Hさんは、その言い方にカチンと来たので、次の休日にうかがいますと言って電話を切った。

ほどなくして老人ホームを訪ねた。先日の電話の相手に封筒を見せると、首をかしげながら手に取った。その顔が一瞬で青くなった。

「確かにこの人の字ですが、そんなことありえません」

そう言いながら、事務室から一枚の写真を持ってきた。

その写真を持つ手が震えている。

テーブルの上にゆっくり置かれた写真を見て今度はHさんが驚いた。

「あっ、このおじいさんです!」

あの夜、喧嘩の仲裁に入ってくれた自転車の老人に間違いなかった。

「本当にこの方、亡くなられているんですか!?」

そのうち受付でのやりとりを聞きつけて、老人たちが集まってきた。

再び事情を話していると、誰もが、そんなバカな、と言う。

亡くなったおじいさんと親しかったという老人が前に出て、「そりゃあの人に間違いないわ」と言い出した。

写真の老人は十年ほど前まで岐阜県に住んでおり、ボウリング場に勤めていた。毎日家から自転車で通っていたのだという。

それからHさんは、腹が立って喧嘩をしそうになると、そのおじいさんの顔が頭に浮かんで、気が鎮まるのだという。

その封筒は今も大切にとってある。

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