ドライブ2編(大阪府) | コワイハナシ47

ドライブ2編(大阪府)

ドライブその一(大阪府河内長野市)

十年ほど前のこと。

主婦のE子さんは、知り合いの男性一人を加えた四人で河内長野のあるお寺に参拝した。

すると住職に「この上に八十八カ所の地蔵尊がお祭りしてありますよ。どうぞそちらにもご参拝くだされ」と言われて、お寺やお宮参りが好きな四人は山道を上った。

途中たくさんのお地蔵さんが並んでいて、有り難くお参りしたそうだ。

その帰り道、もっと空気のいいところにドライブしようということになった。

どれぐらい走ったろうか。空気がおいしく気持ちがいい。

「このあたりで休憩しようか」と、道の端に車を止めた。

野原でおしゃべりをしたあと、男性が運転席に、女性たちもそれぞれ乗り込もうとしたが、ひとりだけフロントドアに手をかけたままの姿勢で動かない。

「どうしたの?」とE子さんが声をかける。

「あれ、なに?」とサイドミラーを見つめている。

え?E子さんもミラーを見た。

サイドミラーが真っ黒に見える。

鏡面が黒い色に見えるのではない。鏡そのものがなく、フレームの奥まで暗闇のようだ。

四人の目が闇に釘付けになって何分たったろうか、青い光のような小さな点が真ん中にポツンと光った。

昔のテレビのブラウン管に映像が出る時の光のようだった。

その光がミラーいっぱいに広がると、たくさんのお地蔵さんが映っている。

一瞬全員が振り返ったがお地蔵さんなどいない。

ミラーの前に手をかざしてみても手は映り込まずにやはりお地蔵さんが映っている。

「あっこれ、さっきお参りしてきたお地蔵さん?」

「ほんまや!」

全員が気付いたと同時に、映像はスーッと小さく青い光の点となって消えた。

消えた後には、のぞき込む顔が映っていた。

ドライブその二(大阪府和泉市)

ある冬の夜、このE子さんが同じメンバーで、河内の信太山にドライブに行った。

大きな池のそばに車を止めて休憩をとった。

車の中で時間がたつのも忘れて話し込んでしまった。

気がつけばもう午前一時に近い。そろそろ出発しようかとしたその時。

何か重いものをザーッ、ザーッとひきずる音がする。

しんとした真夜中の山。

「なに、あの音?」

「ヘビじゃない?」

「こんな冬にヘビなんかおらへん」

「じゃあ何よ」

すぐ目の前の景色すら見えない暗闇。

音はだんだん近づいてくるにつれてはっきりしてきた。

藁わら草ぞう履りで歩く足音と何かをひきずる音。

人の息づかいが聞こえる。人の気配が伝わってくる。

音よりも気配が怖い。それが車の真横にピタッと並んだところで止まった。

四人の息が止まった。

チリーン

鈴の音がした。

外には何も見えない。

リン、リン、リン。

三度、鈴が鳴った。

E子さんにはそれが何か般若心経を唱えよ、と言っているように思えた。

「観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時、照見五薀皆空……」

すると、それに合わせるかのように鈴が、リン、リン、リン……と鳴る。

遅く唱えると遅く、速く唱えると速く鳴る。

「終わりました」

般若心経を終えて手を合わせると、チリーンと高く鳴った。

「あんたも唱えて」と、E子さんは友だちを促した。

友だちも般若心経を唱えた。するとやはり同じように、お経に合わせて鈴が鳴る。

四人は、最初の怖さも忘れ、鈴の音をもっと聞いてみたいという妙な気持ちになったという。

四人目の友だちが「これで終わりました」と言うと、チリーンと高く鳴って、藁草履と重いものをひきずった音は、車から遠ざかって行った。

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