あの世に続く行列(栃木県宇都宮市) | コワイハナシ47

あの世に続く行列(栃木県宇都宮市)

宇都宮市でアルバイトをしながら一人暮らしをしていたIさんのお話。

ほんの少し前まで、時給が良いとの事で夜勤のアルバイトしていたIさんは夕方に寝て深夜に起きるという生活をしていた。冬のある日も夕方に寝付くと、近所で何やらドンチキドンチキと和楽器のような音が聞こえてきた。

「お祭りでもやってるのかな? しかしこんな寒い季節にやるものかな」

と、思いつつも、眠りに身を委ねた。

すると、近所のお祭りと思しき夢を見た。寝る前と同様にドンチキドンチキとどこからともなく音が聞こえてきて、皆どこかへ向かっている。しかし、その「人々」は白く半透明だ。何故か怖いという気は殆どしなくて、お祭りの陽気な楽しさが伝わってくる。

よくよく思い出してみると、神輿を見た訳でもなく、出店もないし楽器を鳴らしている姿もなかったのに何故だか夢の中でその白い半透明の人々の雰囲気でお祭りと感じたのだそう。音色に乗って、その人々の感情のようなものが伝わってくる。

Iさんも楽しくなってきて、白い人々と歩き続けた。

目を覚ますと、〇時を過ぎた頃だった。

その日はアルバイトが休みで目覚ましをかけなかった事もあり、いつもより多く寝てしまったが、その奇妙で楽しげな夢の事を思い出して暫くの間、放心していた。

すると楽しい雰囲気だったにもかかわらず、どういう訳か涙がほろりと流れた……。

何だかよく分からない感情に陥ったが、その日の昼以降何も食べてなかったIさんはお腹が空いて、コートを着てコンビニへ向かった。

いつもは自転車を使っていたのだが、なんとなく歩いて行く事にした。

ちょうど夢の中でこの辺りを歩いたなあと思っていると、少し先に見える階段の辺りに目が釘付けになった。何か、白くてゆらっとしたものが流れるように動いてる……寝起きの目が何か錯覚を起こしてるのかと思い、足を止めて目を擦ったりして確かめたがやはり白い何かが見えている。あまりにはっきり見える為、火事か何かかとも思ったが、その白い何かは階段に沿って降りてきて、道に出ると消えて見えなくなる。そして、目が慣れるとそれは人の形をしている事に気付いた……。

これがまた不思議なのだが明らかに人の形が沢山歩いてると認識すると、その動く速度がスローモーションのようにゆっくりになって見えたそうだ。

奇妙なのは、その中の一人は、頭が伸びて何かと繋がってるようにも見えたという。

まだ自分は夢の中にいるんじゃないかと、唖然としていると、十秒くらいで見えなくなった。その石段の前を通る時に見上げてみると、灯りのついた家が佇んでいる。

そう言えば……昨日、喪服の人たちをちらほら見かけたのだった。

その話を帰省した際に母親に話してみたところ。

「あなた、小さい頃にも車の中でそんな事言ってたわよ。白い人たちが歩いてるって言うから何かと思ってたら、初めて来た土地で告別式に出くわして、霊感でもあるのかなと思ってたけど、やっぱりそういうのあるんだね……」

Iさんは自分にあるかもしれない霊感を伸ばす事は少し怖い気もするが、夢の中で感じた、とても楽しい感情の裏で少し悲しい、何とも言えない奇妙な思いが忘れられず、生と死の間にある何か大切なものを汲み取れた気がして、霊感を追求しているところだと言う。

世界にはお葬式でお祭りのように騒ぐ風習がある国や地域もあり、「人生の卒業式なのだから、華やかに送ろう」というような考え方で、死後の世界が存在する方向で考えると、尚更その「卒業」である事と「御祝い」の意識は強くなる気がする。

死後の存在を恐れるだけでなく、笑顔を振るまうという事も必要なのかもしれない。

そんな話をIさんと電話でしていたら「だから私は今ずっと笑顔なのかな、昨晩から何かが家にいるみたいなんです」と話していた。

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