気迫(栃木県 佐野市レジャーセンター跡地) | コワイハナシ47

気迫(栃木県 佐野市レジャーセンター跡地)

N子さんは昔、いわゆるヤンキー娘だった時代に肝試しに行き、こんな体験をした。

N子さんは茨城に住んでいたのだが、ある冬の寒い日に心霊スポットが好きのヤンキー仲間たちと、栃木のレジャーセンターの廃墟まで赴いた。

このレジャーセンター跡はもうその廃墟自体も現存しておらず、かつてはスパと宿泊を備えた施設だったが、経営が芳しくなく、閉設後は映画やドラマの撮影、それにサバイバルゲームの会場としてに貸し出していたようだ。

そして、こういった廃墟には付き物の、心霊的な噂が囁かれるようになった。そこで目撃されるのは「髪の長い白い服を着た女」と「小学生の子供」の幽霊に追いかけられると言うものだった。

肝試しのメンバーはN子さんを入れて、男子三名と女子三名の計六名。

お昼過ぎに二台の車で向かった。今回の肝試しを企画した男子二人にN子さんが

「何で昼間なんだよ?」と問うと、

「夜に行って幽霊出たら怖いべよ!」

……本気で肝試しなどする気は無いようだった。

レジャーセンター跡に到着したが、思っていたよりも何の変哲もない鉄筋の三階建ての建物で内装は全て取り払われ、コンクリートむき出しの状態。サバゲーで使われるバリケードやドラム缶が所々に置いてあり、床にはBB弾が転がっていた。

何となく思い描いていた、おどろおどろしいような廃墟ではなかった事もあり、とくに男子は「全然怖くねぇな!」と強がりを言っていた。

N子さんは腹の中では「真昼間に幽霊も肝試しもねェべ!」と毒付きながらも口では「そだね」と適当に合わせていた。

三十分も建物内を散策した頃。飽きてしまったのか、誰からともなく、帰ろうという話になった。時間も午後三時を過ぎ、冬の事なので午後四時が過ぎて暗くなってくるのが怖かったんじゃないか? とN子さんは思っていた。

そして男子の一人、Aの家へ皆で行って、夕飯でも食べようと言う事で話は決まった。

建物を出て、門の外に置いてある自動車二台に来た時同様に別れて乗り込もうとした時の事。N子さんは建物の二階の窓が妙に気になり、振り返った……そこには「映画で出てくる様な、黒髪で白い服を着たいかにもって感じの女の幽霊」が窓に両手と顔をペタリと付けてこちらをジーと凝視しているのが、ハッキリと、見えた……。

「あ、ヤッベェ……本当に居たんだ! 遭遇しなくてよかったわ!」と、心の中で呟きながら自動車に乗ろうとしたところ、全員がその窓を凝視し、黙っている。

「あら、みんな見えちゃってるのね……」

N子さんは何だか間が悪く思えたとの事で、それは言葉には出さなかったが、全員が無言のまま車に分乗して出発した。

暫く走った頃……後ろの席の男子はドアにもたれる様に外を見て黙っており、運転する男子はそれが気になったのか、ルームミラーからチラチラと様子を伺っていた。

目的地であるAの家には明るい内に到着した。エンジンを切ると、運転していた男子がドアを勢い良く開けると飛び出し、全速力で三十メートルほど離れた場所まで逃げ、運転席の後ろのドアも開き、男子が転がるように這い出して門扉の陰に隠れて震えだした……。

すると、普段はおとなしい太った雑種の犬が狂ったように吠え出す。

「おめぇたち、何やってんだ!?」

N子さんは何が何かだか分からない状況だが、情けない男子たちに一喝しながら助手席のドアを開けて車から降りると……その時にはっきり見えたそうだ。

助手席のすぐ後ろに、廃墟で見た、あの女がうつむいて座っているのを……。

後ろに付けたもう一方の車から三人が降りて来ると、皆にもその姿がはっきりと見えたようで、男子は「うわっ!」と一言発すると走って逃げてしまった。女子たちは恐れのあまり震えながらどうする事も出来ず、只管泣いていた。

男子は遠くからコチラの様子を伺い、一人はお経のようなものを唱えている。

犬はギャンギャンと吠えながらも、尻尾を股の間に丸めて萎縮してしまっている。

しかしN子さんは半分覚悟を決め、開けっ放しの運転席の後ろのドアから幽霊と思われる女に話しかけた。

「あんた、迷惑だから帰ってくんない!?」

しかしそれでも姿は消えない。どうしたものかと思いつつも、段々と腹が立って来た。どちらかというと、幽霊よりも……普段は虚勢を張って大きな顔をしているくせに、この様子を怯えながら遠くから見ているだけの、情けない男子たちに。

N子さんは犬の鎖を外すと抱き上げ、運転席の後ろのドアから車内に放り込んだ。犬は振り向き、躊躇したような顔でこちらを見たが「お前が行けよ! あょっ!」と怒鳴るN子さんの気迫にどちらが怖いのか察したのか、吠えながら女の幽霊に飛び掛かっていった。すると、流石の女の幽霊もやっと顔を上げ、N子さんと目が合った。驚いた様な、困った様な複雑な幽霊の顔。N子さんの気迫に押されたのか、消えていなくなってしまった……。

N子さんはこう語る。

「迷惑かけているのは自分のくせにあの女、情けない顔するからさ……思い切り勝ち誇った顔で見降ろしてやったんだよねぇ!!」

……筆者としては霊というのは基本的には哀れな存在で、殆どの場合に人を怖がらせるどころか、助けを求めているものと考え優しく接しがちなのだが、やはりこの世への未練を断ち切らせるには、この話のように霊をもはっとさせる「喝」を入れるN子さんのような威勢もまた必要なのかもしれない……。

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