血の池(栃木県日光市ホテルF廃墟) | コワイハナシ47

血の池(栃木県日光市ホテルF廃墟)

日光市室瀬にある、有名なホテルF廃墟。栃木では有名な心霊スポットなのだが、系列店が現在も運営中の為、イニシャルにて綴らせて頂く。

本項の舞台となるホテルFではオーナーが自殺したとか、死体が見つかったなどの噂に始まり、この辺り一帯でもカーナビがおかしくなったり、走行中に車を叩く音がして後から確認すると手形が残っていたとか、首なしライダーの目撃など実に様々な話がある。

今回は現地取材にもご協力して頂いた、日光市在住のSさんのご体験。

Sさんが友人らと四人でこのホテルF廃墟へ肝試しへ行った時の事。

うち二人はカップルで、友人Kの彼女のFさんが運転をしてくれていたのだが、廃墟に着くと「やっぱり私は怖いから行きたくない……車で待ってる」と言って、車から出ようとしない。Kさんは彼女を一人きりで置いて行きたくはなかったが、男友達と廃墟探索したい思いが勝ってしまい「怖くなったら電話して、すぐ戻るから」と言い残し、男三人でホテルの廃墟へ入っていった。

Fさんを独り残してきてしまった事に不安を残しつつも、廃墟探索を開始した。

「自殺があった五階がやばい」とは聞いていたものの、そこでは何も起こらず「こんなもんか……」と足を進め、最上階である九階へ昇る階段での事。

「え……誰あれ?」

一同が、人影に気付く。ワンピースを着た女性が、いる……。

それは暫く見えていて、騒然となった。

「ってかこんな時間に女一人っておかしくね?」

「いや、まじでおかしくねぇか? 本当やばくねぇか?」

そして突然、その女は姿を消した。

いつの間にか、などではなく、目の前で、消えた。

女の後を確認する為にも屋上へ上がってみたが、やはりどこにもいない。

屋上からFさんを残した車が見え、Kさんは流石に心配になったようで「電話もこないし大丈夫だとは思うけど、そろそろ降りるか……」と言い、皆同意してそそくさとホテルを出て、車へ戻った。

SさんはFさんが携帯でもいじって待っているのだろう、と想像したが……運転席を覗き込むと、Fさんはハンドルを握ったまま固まっていた……視線も真っ直ぐのまま動かずよく見ると震えているようだった。窓をコンコンと叩くと、ようやくこちらに気付き、Fさんはこちらに視線を動かしこう言った。

「足元見て、足元……」

……Fさんが携帯の灯りを下に照らすと、なんと……車中が膝の辺りまで血のような真っ赤な液体でなみなみと浸されていた。皆信じられない光景に唖然としていると、Fさんは「これじゃみんな乗せられないから」と言って、車を発進させてどこかへ行ってしまった。

「おいおい! 待てよ!」

真っ暗の大きなホテル廃墟前に残されたSさんら三人。Fさんが心配で電話をかけ続けるも、出てくれない。言いようのない不安が募る中、三人は歩いてとにかく帰路を辿った。すると、途中のコンビニで車を見つけ、中を覗くとFさんが気を失っていた。

血のような赤い液体は見当たらないばかりか、痕跡すらない。

Fさんを介抱して意識が戻ると、わんわんと泣きながらこう語った。運転席で待ってる間に足元が異様にあったかくなってきたので見下ろすと、先ほどの血のような液体に脚が浸かっていて、更に車中に人の息のような音がし始めた……恐怖のあまり身も心も文字通りに凍りついてしまい、皆が戻ってきた辺りから何も覚えてないのだそうだ。

大昔に中国で作られた〝仏教偽経〟『血盆経』には女性劣機観と見て取れる「血の池地獄」が書かれているのだが、これは女性の生理的出血によって地神、水神、飲水などを穢した場合に堕ちるとした地獄で、これを思い出す……そもそもが理不尽な女性を軽視した不浄観が加えられた偽経なのだが、この思想は情景的に多くの人が思い描く地獄のイメージと一致しやすいせいか、中国と日本では地獄観の定番となるくらい、流布される事となった。これに限らず女性と血の関係は世界の様々な文化で象徴的に表されるが、それがこの体験のように視覚化現象として現れたのは、一体何を意味しているのか……。

どんな〝偽経〟にせよ、それを作ったのも人、怪異を引き起こす〝何か〟も霊だとすれば〝人〟だ。その偽経の血盆経信仰を持った人間が死後に何らかのイメージを与えてくる場合には、作り物の地獄観ですら本物の地獄の一片を演出してしまうのかもしれない。

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