引き寄せ(栃木県宝木町 ケンちゃんハウス) | コワイハナシ47

引き寄せ(栃木県宝木町 ケンちゃんハウス)

栃木県で有名な心霊スポット、ケンちゃんハウス。

その名の由縁は昔、精神的な病気を患っていたケンちゃんと呼ばれる子供がある日、爆発的な衝動によって次々と家族を惨殺し、死体を置いたもしくは殺めた場所が風呂場と言われており、当のケンちゃんは行方も消息も不明……。

そしてその惨殺の場となったと言われる廃屋の候補が実は三つもあるのだが、今回はその中でも最も有力かつ怪異体験が多いとの噂の宝木町の東北道沿いにあるケンちゃんハウスでのご体験を日光市在住の山彦さん(仮名)より御寄せ頂いたのでご紹介したい。

時は昭和後期。山彦さんは中学卒業後の夏、車の免許を持っている先輩二人に誘われて夜のドライブへ行く事となった。

後輩二人も入れて計五人となり、東北道沿いのケンちゃんハウスへ肝試しも兼ねて出発した。先輩の運転する車、そして初めて行く有名心霊スポットという事もあり心躍る道中を堪能し間もなくして竹林の中にぽつんと佇む、ボロボロの平屋の一軒家に着いた。

壁が無くなっていたりして、様々な噂がなされるだけある雰囲気は携えていたものの一通り散策しても、特に何もなかった。

しかし、それからもそのメンバーで集まり暇になると「ケンちゃんハウスに行こうぜ」という話になり四回ほど通ったそうだが、やはり何か怪異が起こるような事はなく、純粋にドライブの目的地としてただ行って帰ってくるような感じになっていたが、翌年の夏に赴いた時だけは違った……。

すっかり定着したいつもの五人で深夜にケンちゃんハウスに向かっている時の事。

当時の車のカーステレオであるカセットテープが、ケンちゃんハウスに近づくにつれてきゅるきゅるっと音を立てて勝手に早送りや巻き戻しを繰り返すようになり、仕舞いにはテープが絡まったのか、動かなくなってしまった。

異常な出来事に皆驚き、車内に不穏な空気が漂うも車はケンちゃんハウスへ到着した。車のドアを開けると……寒い。夏なのに、異常に寒い。山彦さんの体調不良などではなく五人ともそのように感じていたという。

ライターの火で明かりを作り、屋内に入ると惨殺が行われたと噂の小さなお風呂場へ向かった。よくよく風呂場内を見ようとすると突然、ボンッと音を立てライターの着火部分が爆発した……。

度重なる異常に加えてのこの現象の流れに一同は「これはヤバイ!」と思い早々に皆で退散し外へ出ると、今度は家の周りにある竹林の方からモソモソと数人の話し声が聞こえてきた。山彦さんは近くの家の声かな? と考えるも、そんな声が聞こえてくるのは初めてだし、そういえば近隣には明かりもなく変に思い、先輩たちに「近くに家ってあるんですか?」と聞くと「……家なんかねーよ!」と言われ、そのすぐ後。

青褪めた先輩が無言で竹林の方を指差していた。

意味ありげな無言の指の先に恐る恐る山彦さんも目を向けると……。

そこにはなんと、人の頭が浮かんでいた。性別や髪型は分からないほど白くぼんやりしているものの、此方を睨んでいるのがよく分かったそうだ……。

全員がそれを見て慌てて車に乗り込み、無事に帰って来れたそうだが、それから二度とケンちゃんハウスへ行く事はなかったという。

今ではそのケンちゃんハウスは取り壊され、存在しない。

実はこの話の大元となった噂のような惨殺事件の裏をとる事は出来ず、本当はそのような事件などなかったという話もある。

少なくとも「ケンちゃん」と呼ばれる子供が家族を惨殺するという共通事項を有した事件が栃木県内でまとまって三つも起こる確率は極めて低いだろう。しかし、それでいてその由縁を持つ同名の廃墟が三つも存在したというのは、いささか異常な事ではないだろうか? たとえ現場がその三つの廃墟のどれでもなかったとしても、モデルとなった事件やそれに纏わる怨恨や悲しみが人々にその云われを伝播させたのかもしれないし、人々の噂話が「何か」を本当に引寄せてしまっている……もしくはその両方かもしれない。

「噂が噂を呼ぶ」という言葉があるが、その噂に引き寄せられるのは、何も生きた人だけとは限らないのだ。

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