おにぎり(和歌山県) | コワイハナシ47

おにぎり(和歌山県)

Sさんが彼女と熊野の峠道をはじめてドライブした時の話。

急カーブが続く下り道を走っていた。

カーブの続く道も上りの時はそれなりに楽しく、話しながら運転する余裕もあったが、下りとなるとそうもいかなかった。

自分ひとりではないだけに、緊張してハンドルを切っていた。

その口先に助手席の彼女が、はい、とおにぎりを差し出した。

「あっ、今ええわ」

おにぎりを持つ手が引っこんだ。

しばらくするとまたおにぎりを持つ手が顔に近づいた。

「あとでええて。カーブ多いねん。危ないやろ」

引っこんだ。するとまたおにぎりが……。

カチンときた。

「あとで食べる言うてるやろ!」

横を向いて怒鳴ると、彼女はドアにもたれて熟睡していた。

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