狐に憑りつかれた男(茨城県笠間市) | コワイハナシ47

狐に憑りつかれた男(茨城県笠間市)

水戸市発祥の新興宗教の法人があった。

威勢のいい営業部長が、笠間市にその宗教法人の『笠間分社』を作ろうと、ある物件を借りた。

笠間市には笠間稲荷神社があるが、笠間市自体は広いし、神社の近くというわけでもないので、特にこだわりもなく不動産契約をすることに至った。

ところが、その賃貸契約を締結したとたん、体に百匹の狐が憑りついて入り込んでしまった。

狐は稲荷神社の神の使いになるので、生きた狐でなく、狐の霊になる。

体に入り込んでしまうと、普通のお祓いでは取り出すことができない。

「た、たすけてくれ」

営業部長はその日から身動きが取れなくなり、普通の生活ができなくなってしまった。

体が勝手に浮き上がり、自分の脳とは全く違う動きをしてしまうのだ。壁を殴ったり、はたから見れば、精神病でコントロールが効かない患者が暴れまわるような感じだ。

家族は警察にも病院にも連れていけない状態で、宗教法人の始祖の代表にお願いに来た。

「おたくの分社を作ろうとしてこうなったんだから、責任持ってくださいよ」

仕方なく、霊が百体着いたまま、水戸に住んでいた代表の家で一匹ずつ狐の霊をお祓いして出すことになった。

しかし、部長は空手の有段者で、体も大きい。そんな彼が暴れると家じゅうが壊れるような力で殴ったり蹴ったりを繰り返す。壁に何個も穴が開いた。

代表も女性なので、暴れる力には勝てないし、もはや人間の力を超えていた。

仕方なく、ぐるぐる巻きにして布団や柱に縛り付け、除霊を行った。

代表が念仏を唱えると、部長は体が勝手に跳ね上がるようで、拒絶反応を起こす。

「代表、これ以上は危険です!」

おさえるのに必死な信者も叫ぶ。

「お、おえっ」

営業部長は突然腹から何かを吐いた。

汚物はなかった。何も食べていないというのもある。

「今、一匹出たな」

代表にだけ、狐が見えた。

「これはもう、一匹ずつしか出ない。これからは根気がいるが、毎日取り出していくしかない」

「おえっ」

「もう一匹出たな」

そうして、百匹目の狐が吐き出されたとき、やっと営業部長は我に返ったそうだ。その月日は約三か月。

どうして狐が憑りついたか、読者にはもうおわかりだろう。

このエリアに、別の信仰が入るのを嫌った、のだろう。

代表はその後も分社を作ったが、笠間にだけは作れないと話していた。

稲荷神社自体は、秦氏の氏神が始祖で、神社の数は日本で最も多い。

その後、宗教団体の代表は六十代で突然亡くなられた。霊能力が高く、とても惜しまれた命だったが、彼女は死の直前にこうしたお告げを受けたそうだ。

「一度も聞いたことのない曲が流れたら気をつけろ。それは現世での音ではない。霊界の音楽だ。それが耳に聞こえたら、お迎えの合図だ」

と。

「代表(義母)と亡くなる前日にコンサートに行ったんですよ。子どもも一緒だったんですが、不思議な音楽でね。だけど何の曲で歌手が誰とかまったく覚えていないんです。その音楽自体も全く」

代表はお嫁さんと孫とのコンサートの次の日、台所でイチゴを洗いながら倒れ、そのまま帰らぬ人となった。

僕が初めて笠間稲荷神社の境内に入ったとき、社殿自体が狐様の顔に似ているなと思った。

そして、幼少の時から好きな動物は『キツネ』であり、小学校の図工の時間には、クラスのみんなが犬や猫の絵を描くときには必ずキツネを描いていた。

そのせいか、境内にある様々な狐様の像が好きだなと思った。

ところが境内で写真を撮ってみると、無風にもかかわらず、髪が逆立っていた。

別の風が僕の体を通り抜けたのだろうか。

ここにある金色のお守りを買ってからは、仕事で良いことが続いた。

次に行ったときは、穏やかで髪の毛も逆立つことはなかった。

「お前、何者だ?」

最初の時はそんなメッセージも感じたが、今は温かく迎えてくれる。

本堂の外に行くと、大黒様も祀られている。大黒様のお守りも買った。

お稲荷さん=商売繁盛、五穀豊穣、産業隆盛。

大黒様=商売繁盛、五穀豊穣、富貴、縁結び。

と似たご利益がある。

お守りを買う、という行為は、神社にまつられた神様を信用して、寄贈するということだから、神様から見ると絶対に嬉しい行為には間違いない。

信じた者にしか得られないご利益は、神様のほほえみのもとにある。

僕は大好きな神社である。

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