隣の男(京都府) | コワイハナシ47

隣の男(京都府)

京都太秦の映画撮影所で録音技師をしているSさんが「私も技術で飯を食っているプロですが、そのプロでも理屈的にあり得ないと思う事が時々あります」と、こんな体験を話してくれた。

東映TV時代劇の中でもかなり有名な作品を撮影中の時だった。本番中にもかかわらず「うおおおおっ!うおおおおっ!」というすごい叫び声が録音された。それも同じ主演俳優さんの台詞にだけ声が被る。本番中のうえに主役の台詞という〝作品の花〟のシーンで、誰もそんな奇声を発するわけがない。

「スタッフの首が飛んじゃいます。本当に主役の台詞だけに被るんです」

しかも何度録とり直しても叫び声が入る。

理由不明の撮り直しが続いて役者さんたちが怒りだした。

そこで全員で聞き直したが確かに聞こえるから使えない。

気味が悪くなってその日は中止になった。

ところが音響スタジオにテープを持ち帰って確認すると、録音されていたはずの奇声が消えていたという。

その録音部に別の撮影所から新人が来た。

徹夜でダビング作業していると、その新人が「ところで、いつも隣の部屋で作業している人はどなたなんですか?」と聞いてくる。

「誰?」

「隣の部屋をよく使っている人ですよ」

「誰もいてないはずやけどな」

「いや、いてますって。この前も居眠りしかけてたら、おい、作業中に寝る奴があるか!って、起こされました。しょっちゅう隣の部屋に座ってますよ」

「どんな人や?」

「どんなって、五十くらいの人で……」

詳しい人相と服装を言う。と、それを聞いていた周りの古参連中の顔色が変わった。

「これな、ちょっと昔の写真やけど、この中にその人おるか」と、スタッフの集合写真を見せた。

「あっ、この人です」

その人はもうずいぶん昔に、その隣の部屋で作業中に亡くなった人だった。

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