馬ヶ背 浮気相手への呪い(宮崎県日向市細島) | コワイハナシ47

馬ヶ背 浮気相手への呪い(宮崎県日向市細島)

日豊海岸国定公園の南端に位置し、柱状節理のリアス式海岸は大迫力で、福井県の「東尋坊」に勝るとも劣らないと言われている。中でも「馬ヶ背展望所」の断崖絶壁は、高さ七十メートルにも及び、圧巻のスケールであるのだが、やはりというか、自殺の名所としても名を馳せてしまっている。

私が工場で働いていた頃の後輩である大輔は、宮崎出身の遊び人で、福岡と宮崎に彼女がおり、休みの度にそれぞれの彼女に会いに行っていた。

その日は、宮崎の彼女である玲さんと馬ヶ背までドライブに行くことになっていた。

馬ヶ背展望所の近くには、「クルスの海」という十字の形をした海岸沿いの岩場があり、祈ると願いが叶うという事でデートスポットにもなっている。それを彼女が一度見てみたいという事で、昼間に大輔の車で向かうことになった。

いつものように車の中では他愛もない会話をしつつ、二人の女性を手玉に取っている自分に酔っていたのだという。

駐車場に車を停めると、玲さんをエスコートしながら、まずは願いが叶うといわれている鐘を二人で鳴らした。

「ふふふ、大輔君、私が何を願ったかわかる?」

「え? 何?」

「大輔君が私だけを見てくれますように、って」

そう言って微笑む玲さんの目は全く笑っていない。

(浮気がばれたか?)

ヒヤリとしたそうだが、偶然だろうと気持ちを切り替えて、馬ヶ背の突端目指して手を繋いで歩いていく。玲さんはニコニコと笑ってはいるのだが、明らかに先ほどの鐘を鳴らした時から、口数が少なくなっている。若干の気まずさを感じながら歩き続け、突端までたどり着くと、玲さんはにこやかに微笑みながら言い放った。

「大輔君が浮気したら、私ここから飛び降りようかな」

「そんなこと言うなよ! 俺が浮気するわけないやろ!」

(こいつ気が付いている?)

二度に及ぶ追及で、さすがの大輔も焦り始めたそうだが、ここは完全にしらを切り続けた。納得したのかどうかはわからないが、玲さんは目を細めて笑い始め、大輔もその表情に安堵したそうだ。

その後、明日は仕事だからという理由で早めの時間に別れると、その足で福岡に帰り、福岡の彼女とディナーをする手筈になっていた。

しかし、約束の時間になっても彼女は現れない。

携帯に電話しても反応はなく、約束時間から三十分経ったところで諦めて家に帰ることにした。

その日の深夜、約束をすっぽかした彼女から電話があった。

「大輔君? 今日ごめんね!実は救急車で運ばれとって、今も病院に入院しとるんよね……」

「え? 大丈夫!?」

「うん、午前中だけ仕事やったんやけど、途中で意識失って倒れたんよ……」

貧血で倒れてしまったそうだが、倒れた際に頭を強く打って脳震盪を起こし、そのまま救急車で運ばれたのだという。もう気分は良くなっているというのだが、念のため、今日だけは病院で安静にすることになったそうだ。

明日には退院できるということで、部屋に見舞いに行くからと約束して電話を切った。

その直後、玲さんから電話がかかってきた。

あまりのタイミングの良さに驚いたが、恐る恐る電話に出る。

「大輔君?今日の私の本当の願い事を知りたい?大輔君の浮気相手が死にますよーに! って願ったの! ふふふふふ……」

(イカれてる!)

すぐに電話を切った。あいつは浮気してることを知っていて、しかも、浮気相手が倒れたのは、まさか玲のせい? 偶然かもしれなかったが、先ほどの電話のタイミングからして、何やら不穏なものを感じた大輔は、もう玲さんとの縁を切ろうと、彼女からの連絡を全て拒否することにした。

翌日、仕事が終わってから福岡の彼女の家に見舞いに行くと、大分具合がよくなったようで顔色は良い。

「大変やったね。もう大丈夫?」

「うん! 昨日はホントごめんね。今日も仕事終わってから、わざわざ来てくれてありがとう」

「昨日、私が電話したやろ?そのあと寝とったら気持ち悪い夢見たんよね。行ったことない断崖絶壁みたいなとこにおって、目の前に女の人がおるんよね。で、私を睨みつけてから死ね!って言ったかと思うと、そのまま崖から飛び降りるんよ……妙に生々しくて、そこで目を覚ましたら汗びっしょりかいとるんよね」

どんな女? とは聞けなかった。

倒れたせいでそんな夢を見たんだろうと宥めると、明日も仕事だからとすぐに部屋を出た。

一人になると、一気に恐怖が襲ってきて膝がガクガクと震えた。

それからは福岡の彼女とも一方的に縁を切った。

玲さんがどうなっているのかは、わからないままだ。

自分の夢に出てくるということもない。

それからずっと、大輔に彼女はいないままだ。

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