うしろを向かないで(東京都) | コワイハナシ47

うしろを向かないで(東京都)

都内のある録音スタジオでのことである。

当時、アイドル歌手であったSさんが新曲をレコーディングしていた。

唐突にヘッドホンから聞こえる音楽が止まった。

いけない、間違った?

譜面から顔を上げるとブース内の録音スタッフが全員立ち上がって自分を見つめている。

「途中ですがちょっと中から出て来てください。それから、うしろを振り向かないでください」

だいじなレコーディングの最中に何が言いたいのかわからない。

「いいから、いいから、出て来てください。そのまま真っ直ぐ。振り向かずに、そこから出てください」

とディレクターが指示を出す。

言われるままにSさんはヘッドホンを外すと、そのままドアを開けた。

驚いたことにドアの外にはマネージャーやスタッフが、まるで出迎えるようにして集まっている。

「今日はここまでにします」

えっ、まだ途中なのに?

マネージャーやスタッフたちの様子がおかしい。そのうえスタジオの電源まで落として、全員一緒にスタジオを出てしまった。

後日、別のスタジオで再録音が終了した時に、はじめてその理由を知らされた。

レコーディングの最中に、その場に居合わせたマネージャー、スタッフ全員が見た。Sさんのうしろにある大きなスピーカーから、両手をわらわらと伸ばしながら、上半身裸の女が少しずつ出てくる。

ブースの中は騒然となった。

助け出したいが、それより振り向いてこれを見たら、きっと身体が動かなくなる。

そう考えての誘導だったとプロデューサーが話してくれた。

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