さちこおばさん(東京都) | コワイハナシ47

さちこおばさん(東京都)

Wさんの両親が若い頃の話。山形の村から集団就職で上京したての頃だった。

結婚する前の両親は、お互いの会社が近くだったので、昼休みにはよく日比谷公園で落ち合って一緒にご飯を食べていたという。

その日も、いつものようにふたり仲良くベンチに座って、お弁当を食べていた。

すると向こうから、喪服姿で手に白い提ちよう灯ちんをもった女性がやって来る。

黒い着物に昼間に提灯というあまりに場違いな姿にびっくりして見ていると、見覚えのある人だと気がついた。

「あれ、お前の親戚のおばさんじゃないか?」

「あら、ほんとう。さちこおばさん」

おばさんはわき目も振らず一直線に自分たちを目指して歩いてくる。

あぜんとしているふたりの目の前で止まると「あなたのおじいさん、亡くなったから今からお家うちに帰りなさい」と言い背を向けて、今来た方向に帰っていく。

ふたりで顔を見合わせた。

会社には何の連絡も入っていなかった。それだけに、どうして山形にいるさちこおばさんがあんな格好をして東京の日比谷公園に現れたのか、その方が気になった。

会社から実家に電話したが誰も出ない。

おじいさんが息を引き取ったという連絡は、夕方になってやっと会社に入った。

Wさんの母親は休みを取って、実家へ帰った。

お葬式の時に、さちこおばさんと会った。

とりあえず礼を述べると、きょとんとした顔をして、葬儀の手伝いで忙しいのに東京になど行けるわけがないでしょ、と気味悪がった。

しかし、目の前の喪服のさちこおばさんは、日比谷公園のさちこおばさんそのものだった。

シェアする

フォローする