入りたい(宮城県) | コワイハナシ47

入りたい(宮城県)

宮城県在住の、マヤさんの体験談である。

二十年ほど前、県内の女子高に通っていた頃の話。

「じゃーん」

友人のハルが、自慢げに携帯電話を取り出した。

当時発売されたばかりの、動画撮影ができる初めての機種だ。

「折角だからここのみんなを撮ってみてよ」

クラスメイトの声に、ハルはスタートボタンを押した。

カメラに向かって話しかける者、おどけて踊る者。様々であった。

「早速観てみようよ」

ハルの周りに自然と輪ができた。

「ぎゃっ、何これ!」「ちょっとこれマジ?」

動画の再生を始めるや、次々と声が上がる。教室内は騒然となった。

小さなディスプレイに粗い画像。午後の日差しに照らされた教室が映っている。

クラスメイトたちの背後に、ぼんやりと白い靄が浮かび上がってくる。

――ねえ、可愛く撮ってよ!

靄がだんだんと像を結び、濃さを増していく。

――どうこの動き。ちゃんとカメラで追えてる?

とうとう、身体の輪郭や目・鼻・口まで分かるようになってきた。

はしゃぐクラスメイトの後ろで、所在なげにじっとこちらを見つめる姿が映る。

動画は、そこで終わった。

その正体は結局分からずじまいだったようだ。

古い校舎ゆえ、怪談めいた噂も数多あったという。

「私には白い影にしか見えませんでしたが、夏物の学生服を着た男子中学生だと指摘した友人もいました」

マヤさんはそう語った。

我が妻の持つ唯一の怪異体験だ。

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