夏キャンプの思い出(青森県鰺ヶ沢町) | コワイハナシ47

夏キャンプの思い出(青森県鰺ヶ沢町)

青森県在住の園井さんが体験した話。

夏の盛りのこと。友人と連れ立って、鰺ヶ沢町にあるキャンプ場を訪れた。

津軽富士とも言われる岩木山の麓。深い森に抱かれて建つバンガローを借りて宿泊する計画であった。

青森とはいえ、夏は暑い。おまけに二十人近い大人数である。

外でブルーシートを広げ、炭火を熾し、肉を焼いた。酒が何本も開けられる。

園井さんは、その様子を手当たり次第にチェキに収めていった。

当時発売されて間もないインスタントカメラを、早速使ってみたかったのだ。

肉を頬張る姿、一升瓶を開けて酒を酌み交わす姿、早々に酔い潰れて眠る姿。

そんな姿が、次々に切り取られていった。

赤々とした炭はいつの間にか小さくなり、山から湧き出した闇が辺りに満ちてきた。

気付けば、バーベキューコンロを囲む人数も減っている。

何人かはもう、バンガローに入って眠っているのだろう。

「園井ちゃん、さっきの写真見せてよ」誰かが口にした。

ポケットから取り出したテレホンカード大のそれを、順に回していく。

「え……」「何これ……」瞬く間に、場の空気が冷え込んでいく。

ほらこれ――と、手渡された写真を見て、園井さんも潮が引くように酔いが醒めた。

酔った目には、インスタントカメラで撮った写真はこんなものだと見えていた。

画質も粗くて、あちこちに光が写りこんで。

ところが、そうではなかった。

これは顔だ。顔が、いたるところに写りこんでいる。

何となくそんな風に見える、という程度のものではない。

目、鼻、口。表情まで分かる。こちらをじっと見つめる者。苦悶するかのような者。

男もいる。女もいる。あらゆるところに、それはいる。

火を囲む人の間に。談笑する人の肩に。眠る人を見下ろして。

――わああああああっ。

突如、バンガローで男の叫び声が上がった。

バタンと扉が開いて、パタパタとサンダル履きで走る音がして、先に休んでいた友人の一人が園井さんたちの目の前を全速力で走り抜け、もう一度「わああ」と叫び声が上がると同時に、どすんという鈍い音がした。

高さ二メートルほどの崖から転落した彼は、小一時間後、救急車で搬送された。

あの夜、あのバンガローで何があったのか。何から逃げたのか。

彼は覚えていない。

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