キュウリ(兵庫県) | コワイハナシ47

キュウリ(兵庫県)

兵庫県加古川市に住むWさんは、看板の設置作業を仕事にしている。

六年前の夏、四人の作業員たちとある川沿いに車で上流へと遡った。道路脇の設置場所に到着し、作業をしているうちにお昼になった。

下に川が流れているので河原で弁当を食べようという事になった。ところが、途中が切りたった崖になっていて、弁当を持って下りるのがちょっと困難に思えた。どこか道はないものかと、あたりを見回した。

すると少し上流から、ガサガサガサガサッと草をかきわける音がして、ザッパーンと大きな水音がした。

「人が落ちた!」

下を見ると、急流になっている。

「助けなきゃ」と四人が分散して捜してみたが、人は流れて来ない。また、助けを求めているような気配すらない。

「どこから落ちたんだ?」

Wさんたちは、水音のしたあたりに行ってみた。

「こっちやこっちや」と同僚の声がする。

草をかきわけて人が通った跡がある。

「なんや、これは!見てみろや」

あたり一面青臭いにおいがたちこめている。

草むらを半畳ぐらいに踏み広げた真ん中に、堆たかく、キュウリが積まれていた。

すべて真ん中から嚙じり折られている。

採りたてのみずみずしいキュウリ。それにものすごい量。

積まれたキュウリの山は八十センチ近くはあろうかというものだった。

朝からこのあたりで作業をしているが、自分たち以外の姿は見かけていないし、これだけのキュウリを運ぶ手段も道もないはずだ。

首をひねっていると、次第に青臭さが濃くなっていく。

「じゃあ、河童か……」

誰かがこともなく言った。

いっぺんに怖くなり、弁当を食べる気も失せてしまった。

Wさんたち四人はそのまま帰り、翌日改めて看板の設置を行った。

その間はずっと川の方を見ないようにしていたという。

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