りんご園(山形県) | コワイハナシ47

りんご園(山形県)

Wさんが幼い頃、山形県の岩谷の観音様にお母さんとお参りに行った。

この観音様は眼病に効く仏様だそうで、眼を患っている妹さんの治癒を祈願してのことだった。

真っ直ぐの山の一本道を延々と登って行く。途中で白いペンキ塗りの鉄格子に囲まれ、升目のように綺麗に整理して植えられているりんご園に出た。

「ここ、さっき通ったよね」

「うん、通った」

方向を変えて、登って来た道を山の入口まで戻った。その道すがらお母さんが妙な感心をしている。

お母さんの実家にもりんご畑があるからだろう。

「いやに綺麗に整地してあるねえ……。でもねえ。りんごの畑は、あんなに一直線に植えるということはないんだけど」

升目のように綺麗に並んだりんごの様子がちょっと奇異に見えたようだ。

それにずっと続く白い鉄格子。

観音様へは一本道で、突き当たりのT字路をただ右に曲がるだけなのだ。どこにも迷うはずはない。

何度も同じ道を来ているが、りんご園に出たことなど一度もない。

山道の入口に着いた。そして今下りてきた道をまた登り直した。

「また?」

目の前には、白い鉄格子とその向こうに広がる升目に並ぶりんごの木。

三回目にはさすがにおかしいと思った。そこで山道の入口で、大きく息をついた。

そうすると大丈夫だという気がしたのだ。

気を取り直してもう一度今来た一本道を登り直すと、すぐにT字路に出た。

右に曲がると今度はちゃんと観音様のお堂に着いた。

その後、何度も同じ道を通ったが二度と、りんご園に出ることはなかった。

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