警告(京都府) | コワイハナシ47

警告(京都府)

その一週間後、私は大阪の放送局で北野誠さんと会った。

「中山くん、京都ロケ帰りのKの携帯覚えてる?」と聞かれた。

「ええ」

「あのあと俺、気持ち悪い話聞いたんや。実はな……」

誠さんの目が真剣である。

京都市内に幽霊が住むマンションがあるという。ディレクターのKさんはグラビアアイドルでタレントのA子さんからそのマンションのことを聞いていたらしい。

A子さんによれば、住人はSさんという男性で京都太秦うずまさの映画撮影所で録音を担当している技師だという。職場に近いという理由でそのマンションに引っ越した。ところがその晩から若い女が枕元に現れた。Sさんは毎日同じ夢ばかり見ると決めつけていたが、ある日その女が話しかけてきたのだ。

「この部屋は、私の部屋なの。私はこの屋上から飛び降りたの。でも、私もここに居たい。私はあなたの邪魔はしない。あなたも私の邪魔はしないでね……」

この日の約束から奇妙な同居がはじまった。ただ……。

Sさんはよく、帰れなくなったスタッフや役者さんたちに泊めてくれと頼まれることがあった。そんな時は必ず念を押さなければならなかった。

「幽霊出るよ」

「えっ!」と驚きながらも信じてくれる客には何も起きなかったが、

「幽霊?そんなもんがおるかいな」と、馬鹿にする客にはひどかった。

スーツをかけようとすると、ハンガーが空中に飛ぶ。

ビールをつごうとすると、コップがテーブルを移動する。

洗面所で顔を洗おうと鏡を見ると、すぐ後ろに若い女が立つ。

寝ていると、何かが顔にかかる。目を開けると顔じゅうに長い髪が……。

それを聞いていたKさんは、京都ロケの目玉としてそのマンションにテレビカメラを持ち込もうとしたのである。

それには住人のSさんを紹介してもらいたい。そこでA子さんに何度も電話をしたらしい。が、連絡がつかない。いきなりロケをやることも考えたが、それではA子さんにもSさんにも失礼すぎるだろう……。結局、そのマンションのロケは当日になって中止したというのだ。

清滝トンネルの撮影を終えた帰途、Kさんの携帯電話に運よくA子さんから連絡が入った。

「ひょっとしてKさん、今日あのマンションに行こうとしてたでしょ?幽霊撮ろうって、そんなこと考えてない……?今ねSさんから電話があったの。ぼくの目の前に女が現れて、Kって名を盛んに言って、すっごく怒ってるって……。私を見せ物にしようとしてる奴らが、ここに来ようとしている。もし来たら、後悔させてやるって」

A子さんの声が震えている。A子さんはもちろん、Sさんがロケのことを知っているはずがない。

A子さんは続ける。

「まだ信じられないでしょ。伝言はまだあるのよ。いい?Sさんに言われたメモ通り言うね。夜の八時に京都駅を出発、四条河原から鴨川に降りて最初の撮影したでしょ。九時四十分頃に深泥ケ池で撮って、清滝のトンネルに到着したのが夜中の十二時前。一時間半ほど撮影して、一時四十分にトンネルを出発して、今、嵯峨野から京都市内へ戻っている途中でしょ?」

「えっ、何で!?誰が知ってるの!?」

「だから、Sさんの前にいる女の子……私、怖い」

そんな会話だったのである。

知っているわけがない。八時に出発したのは私の予定外の遅刻のためだし、その時同乗していた人間だけが知っていることだ。それを東京にいるA子さんがその場にいるかのように言い当てる。

「誰に聞いたの?何でそんなこと知ってるの?」と言うしかないKさん。

「今Sさんの前にいる女がそう言ってるって」とA子さんも繰り返すばかりだったという。

この電話を受けるまで、Kさんはまだ幽霊マンションのロケが諦あきらめられなかったらしい。そんな矢先のA子さんからの電話だったのである。

押し黙ったのは、そういう訳だった。

「昨日やっとKに聞き出したんやけどな、気持ち悪い話やろ。俺ら、幽霊にずっと行動を見られてたんや」と北野誠さん。

そして「なんや聞くんやなかったな、こんな話」とつぶやいた。

京都の幽霊マンションシリーズ vol.1

発端(京都府)

警告(京都府)※この話

人が寄る場所(大阪府)

男だけに見えるもの(大阪市)

赤い三輪車(京都市)

夜中のロケ(京都市)

エレベーター(京都市)

あそぼう(京都市)

名前(京都市)

通行人(京都市)

もうひとりの住人(京都市)

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