男だけに見えるもの(大阪市) | コワイハナシ47

男だけに見えるもの(大阪市)

A子さんが居候して間もない頃、共演している男優さんが、撮影の合間にこう漏らした。

「俺、今、市内のホテルに泊まってるんだけど、部屋に幽霊が出るんだよ。気味が悪くって帰りたくないんだ」

そういえばそういう事に敏感な人だとは聞いていた。

「だったら私が居候しているマンションにいらっしゃいよ。しょっちゅう撮影所仲間が集まって酒盛りやったりしてますから賑にぎやかですよ。それにここから近いし」

なぜか、人の家なのに気軽にそう言ってしまう。

「いいの?じゃあ厄介になろうかな」よほどホテルが嫌だったのか、その夜、男優さんがその部屋に来た。撮影で疲れたのか酒盛りに加わらず、ひとり四畳半で寝てしまった。

しばらくして「わあーっ!」という絶叫が四畳半から上がった。

部屋に飛び込むと、隅で小さくなって目を見開いている男優さんがいる。

「たすけてくれーっ」

頑健で、男らしさが売りの男優が完全に怯えきって取り乱している。

「どうしたんですか?」

彼が震えながら前方を指さした。

「そこ、そこ……」

「うわっ」

その方向を振り返った男性全員が、ドンとその場に腰を落とした。

が、A子さんたち女性には何も見えない。

「女!女!そこに!女が!」

「いませんよ、誰も」

「女が、ここから出さないって。たのむ!出してくれ、出たい!来るな、来るな!」

男優はますます部屋の隅から隅へと身体を退かせる。

他の男性たちも涙を浮かべて、部屋のもう一方の隅へと身体を寄せて退いていく。

「私たち、どうしたらいいんですか!」

A子さんたちも異常な空気にヒステリックになる。

「わああ、悪かったぁ!出してくれ!出してくれ!」

男優はなおも泣き叫び続けた。

その時、ガチャリと玄関のドアが開く音がして「ただいま」というSさんの声がした。

その瞬間、立ち上がった男優さんは「わああああっ」と叫びながら、寝ていた時のままの姿で玄関を飛び出していった。

腰を抜かしていた男性たちは「あの子、あの子」と半泣きでくり返すばかりだった。

京都の幽霊マンションシリーズ vol.1

発端(京都府)

警告(京都府)

人が寄る場所(大阪府)

男だけに見えるもの(大阪市)※この話

赤い三輪車(京都市)

夜中のロケ(京都市)

エレベーター(京都市)

あそぼう(京都市)

名前(京都市)

通行人(京都市)

もうひとりの住人(京都市)

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