夜中のロケ(京都市) | コワイハナシ47

夜中のロケ(京都市)

移動中のワゴン車で、私とA子さんの会話をディレクターがじっと聞いていた。

「その話、ほんとうですか?」とどうやら興味を持ったらしい。

「ほんまほんま、俺も知ってる」と誠さん。

「それ、どこですか?行ってみませんか?」

「いや、それはやめた方がええで。この前は一部始終俺らの行動、見張られてたんやから」

「私も絶対イヤ」とA子さんも首を横に振る。

「それに、今はもうSさんそのマンションにいないし」

「えっ、引っ越したん?」と誠さん。

「半年くらい前かな」

「じゃあ、取材は無理か……」とディレクターがつぶやく。

「いや、行きましょうよ」

促したのは私だった。

「中山さんは話を知ってるでしょ。行かん方がええんとちがうかな」

誠さんの意見を尻しり目めに私は言った。

「去年は部屋に入って、テレビカメラで幽霊を撮ろうとしたのがいけなかったんでしょ?だったらマンションの外観だけ撮りましょうよ。それなら部屋にいる幽霊を撮るわけやないし、まあ、それでも来るなとその幽霊が言うんやったら、そのマンションに着く前に何かが起こります。もしそういうことになったら、その時考えましょう」

私の理屈には何の根拠もない。

そのマンションがどこにあるのか、どういう建物なのか、そこに一時住んでいたA子さんがいるのだから、見てみたいという気持ちを抑えられなかったのだ。

「外観だけですか……ちょっと怖いですけど、京都まで足をのばしますか」

ディレクターの決断に、我々を乗せたワゴン車は夜の高速道路を京都に向かった。

「このあたり……、あっ、ここ、ここです」

京都市内の通りを走っていた我々のワゴンが停車した。

マンションが目の前にある。一階が店舗になっている。夜中なので中は真っ暗だが、店に入るには道路から階段を下りなければならない。つまりこのマンションの一階部分は半地下にあるのだ。

正面に階段があって、半階分上るとエレベーターホールに出る。

テレビの収録がはじまった。

「Sさんの住んでた部屋ってどこ?」

誠さんがA子さんに質問する。マンションの上の方を指さし、「部屋は、あそこだったんだけど……」

と、その瞬間、誠さんの表情が変わった。

「今の何や!」

「今のって?」

「聞こえたやろ?何か上からひゅーっと落ちてきて、ドサッて音がしたがな!あれ何の音?」

私とA子さんは顔を見合わせた。本当に何も聞こえなかったのだ。

すると、音声さんがゆっくりヘッドホンをはずして、

「聞こえました」

そしてそれは、微音ながら確かにビデオテープに録音されていた。

京都の幽霊マンションシリーズ vol.1

発端(京都府)

警告(京都府)

人が寄る場所(大阪府)

男だけに見えるもの(大阪市)

赤い三輪車(京都市)

夜中のロケ(京都市)※この話

エレベーター(京都市)

あそぼう(京都市)

名前(京都市)

通行人(京都市)

もうひとりの住人(京都市)

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