撮影は続いた。
マンションをひと周りしてみる。建物の形そのものが何か妙だ。外観がやけに凸凹している。裏側の一階部分が駐車場に直結している。その関係で一階部分が表通りより低い位置にあるようだ。
再び、正面に戻った。
「じゃあ、久しぶりにエレベーターに乗ってもらおうか」とA子さんを見る誠さん。
「カンベンしてください」と言うA子さんの手を取って、誠さんは正面玄関に勇ましく入っていった。その後をデジタルビデオカメラを持ったADさんが追う。
ところが途中でまたも血相を変えて、誠さんとA子さんが戻ってくる。
「聞こえたやろ!」
「えっ、なになに?」とA子さん。
「今度は聞こえたやろ?」
「確かに聞こえました。多分、デジカメに記録されてます」
同行したADさんが証言する。
ビデオを再生してみた。
エレベーターの前にふたりが進む。誠さんが八階のボタンを押す。その時かすかに「うーっ」という女の呻き声が聞こえた。
この様子は、人物以外すべてモザイクという異様な画面で放送された。
京都の幽霊マンションシリーズ vol.1
→エレベーター(京都市)※この話