あそぼう(京都市) | コワイハナシ47

あそぼう(京都市)

テレビ撮影で大いに興味をかき立てられた私は、連絡先を調べてSさんに直接取材を申し込んだ。

Sさんがこのマンションに引っ越してきたのは九年前。

条件は職場である撮影所に近いこと。そして友人のNさんとふたりで一緒に住める程度に広いこと。そして安いに越したことはない。

不動屋さんにそう伝えると、「あります」と紹介されたのがそのマンションの八階の角部屋だった。

即決した。六畳二間に四畳半、十畳のリビングの広さで眺めのいい最上階。しかもこの部屋だけは他の階の半額だったからだ。

引っ越したその晩。

Sさんは四畳半を自分の部屋とした。この夜、どうにも眠れずに何度も何度も寝返りをうっていた。

あれ?

窓の外から女がのぞいている。二十歳前後の若い娘。長い黒髪に黒いワンピースを着た、顔立ちの整った美女だ。

ああ女が外にいる。きれいな人やなと思ったが、はっと気づいた。ここは八階。そこにベランダなどない。人が立てるわけがない。

まさか、ともう一度窓の外を見た。いる。こっちをじっと見ている。しかもよく見ると、長い黒髪と黒い衣服が透けていて、向こうの明かりが見える。

うわっ、この世のもんやない!

Sさんは、布団を頭まで被ってもガタガタと震えが止まらなくなった。頼むからどこかに行ってくれ、とそればかり考えていたら、ふっと人の気配が部屋に降った。

さらさらとした衣擦れの音と、畳を踏みしめる音が、背後からゆっくりと近づいている……。

肩に何者かの手がかかったかと思うと、ゆさゆさっと揺すられた。

「あそぼう」

見たくない。しかし身体が勝手に振り向いてしまう。窓の外にいた美女がそこにいる。

「あそぼう」

「わあっ!」

また布団を頭まで被って、朝まで震えていた。

夢だと思いたかった……が。

次の夜も、その次の夜も。

三夜続いた。「あそぼう」と囁きに来る。

酒を飲んで酔って寝たら、朝まで目が覚めなかった。

「あそぼう」と言われても無視していればその女は消える。

ここは安いんだから、と自分に言い聞かせ無視しているうちに、Sさんはその女に慣れていったのだという。

京都の幽霊マンションシリーズ vol.1

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あそぼう(京都市)※この話

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